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WIAH 7 老人

2015-11-29 Sun 00:00

7【老人】

白髪白髭の品田老人に先導され、門の中に2人が入った。古い武家屋敷を想わせる佇まい。
サッシでは無く木枠のガラス戸に木の雨戸。


まるでタイムスリップしたような世界がそこにはあった。

そして、2人は品田老人の後に続き家の中に案内され、長い廊下の手前の部屋に入った。そこは、8畳らしき部屋で、中央に座卓と向き合う形で座布団が1つと2つ置かれているだけだった。
品田老人に向き合う形で座った二人。

「驚いたじゃろ!
雨が降れば、雨漏りもするかも知れん。庭には得体の知れない虫が顔を出し、木枠の家の隙を抜いて部屋に侵入もして来るぞ!
それでも、ここに住み込んでまで働きたいか?」

面白がるようにつくしに尋ねる品田老人。
座っている座敷周辺を思わず眼だけで見回してみた。確かにそうであっても不思議はない気がする。でも、そんな暮らしにビビる程、軟な生活はこれまでもない。

「ゲジゲジ・いも虫・団子虫。触れない虫はあいにくありません。どうぞお気使いなく。」
「ほう!根性がすわっとる。
で?いつからここに住む?」

「ありがとうございます。明日支度して伺います。」
「部屋は6畳じゃが、荷物は入るか?」

「はい。問題ありません。」
「そこの色男も一緒か?」

「色男?・・・俺ですか?」
「他に誰が居る。お前・・・賢そうに見えて少々弱い・・のか?」
老人は、自分の頭を指さし類に話しかける。類より先につくしが反論した。

「な・なに言ってるんです。この花沢類は、なんでもこなせるスーパーボーイです。」
「そうか!
なら、今の答えを言うてみい。」
つくしは、頭の事ばかりに気を取られ、どんな質問だったか忘れていた。
しかし、類が答えた。

「俺は、ここには住みません。今日は、急遽呼ばれて来ただけですから。」
「そうか。覚えておったか。」

老人は、笑いながら立ち上がると、2人に向かい言う。
「今回だけは、特別にわしが茶を入れてやろう。」
つくしと類を残し部屋から出て行った。
しばし二人は黙り込み、少ししてから話しだす。

「フゥ~!倒れてなくて良かった。来てくれてありがとう花沢類。」
「なんで住み込み?それに明日な訳?
まだ社宅に居られるって、そう言ったよね?」

「ごめん。ウソ。」
「なんで正直に俺に相談しない?」

「だ・だって・・・・・」
類に真顔で少し荒げた口調で言われたつくしは、身を屈ませシュンとなった。それを見て、思わず言いすぎたと思った類が、つくしの頭を優しくなでた。
「わかったよ。」
「ありがと!花沢類」

話しているうちに老人が姿を見せた。物持ちがいいのか年代を感じさせる茶器がお盆にのっている。そしてその中には、出がらしの様に見える透き通ったお湯。それを目の前に差し出された。つくしは内心で「おじいさんが入れたお茶だから仕方ないさ」と口にした。

しかし、類は表情を変え老人を見据えてから茶器に口を付けた。先に声を出したのはつくし。

「見かけに寄らず透明になっても、入れ方次第でイケるんですね。」

類は、味わうようにゆっくり飲みほした。老人は、類を見つめ首を振る。何も言うなと云うように。

『この老人は何者?どこかで見掛けた気がする。』

飲んでいたその時にインターホンが鳴った。

「すまんが出てくれないか。」
「はい。」

つくしが応対する為に部屋を出た。つかさず、類は老人にお茶のことを尋ねる。

「このお茶は!」
「流石に花沢の子セガレだけあるのう!気付いたか?」

「俺が、なぜ花沢だと?」
「会っているからに決まっておる。ばあさんの葬式は、もう何年前になる?」

「ばあさん?もしかしたら父方のですか?」
「ああ。あん時膝に抱いてやったのを忘れたかな?」

思い出そうと瞼を閉じた。
「思いだしました。お婆様の写真の前で泣き叫んでいたご老人!」
「変なことは思いださんでいい!」

「でも、よく俺があの時の子供だとお分かりになりましたね。」
「ばあさんと面影が瓜二つだ。それにあの子が花沢類と口走った。」

「花沢のお婆様を知っているなら両親も?」
「ああ。よく知っとる。」

「品田さん?・・・・・」
お茶のことと言い、フル回転で思い起そうとした。

「後で、もし色々わかっても、あの子には頑固ジジイのままでいる為に、何も言わんでいてくれるかな。」
「はい。でも、なんで?」

「人は、その地位で色々判断し付き合いを変える。この家も手を加えずにいるのには訳がある。
あと何年ここに住めるかもわからんが、ここに住み始めて5年。わざと古い家を探し、老いを楽しんでおる。
ここに来る者にも服装や車に気を使わせてな。」
「だからお茶も?」

「ああ。せがれは、あれが何だと思う?」
「最高級の白豪銀針。白茶だと思うのですが?」

「流石!
その中でも、なかなか手に入り難いお茶だ。うちの会社で取り扱っておる物だがな。
大抵の者は、この住まいと老いぼれが出した茶だからと、汚いものを見るような目でみおって口さえ付けようとしない者もおる。
出がらしかなにかと思い込み、口を付けた振りだけして飲み込もうとせん者もな。
まあ飲んだところで、そんな輩(やから)に最高級の白豪銀針の味がわかるとも思えんがね。
そこへ行くと、あの子はわからないながら旨そうに飲んで、入れ方次第でこんなにイケるんだと言いおった。
あの子は続く。
だから、わしの素性が知れても内密にして欲しい。」

「条件があります。」
「ん?」

「あいつは、牧野は・・・俺が言うのも変ですが、バカが付くほど気が良い奴です。自分を犠牲にしても、人に尽くそうとする所があります。
俺がここに尋ねてもいいと言う許しをください。」

老人が笑顔で類をじっくり見つめる。

「思い出すわい。若い頃の自分を!」
「エッ?」

「類!その名だったな?」
「はい。」

「類は、あの子に心底惚れてるな。でも、お前は跡取り。さてさて思い通りになるかな?」
「今は・・・そんなこと考えていません。」

「だろうな!まだ学生じゃからな。」
つくしの足音が聞こえ始めた。

「よかろう!いつでも来なさい。約束さえ守ってくれるなら。」
「はい。」
笑顔の類と老人を前に、息を切らしたつくしが戻って来た。

「どうしたの牧野?」
「段ボール2個。ジャガイモ・にんじんの荷物が届きましたから、お台所の隣の食品庫らしき場所に置いて来ました。」

「ハンコは押せたか?」
「はい。」

「つくしと言ったな!」
「はい。」

「わしは、お前が気に入った!」

高らかに笑う老人。それにつられて笑い出す牧野つくし。類はホッとはしたものの、つくしの境遇を思い、なぜか二人のようには笑えなかった。

WISH



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