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好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

風の行方 34 思いやり【第一部・完】

こんばんは、今回で第一部が完結です。
これは、既に決めていたストーリーです。しかし、ハッピーエンドを熱望されるコメをいただき、突き動かされ、こちらともう一つ34話を作りました。
ご覧いただければ幸いです。

34【思いやり】

類とつくしは、車を走らせホテルを探した。

1時間程すると、目の前にビジネスホテルが見えてきた。



その夜、二人は二度目の繋がりの時を過ごした。

真実の愛を誓えたと確信する類。
愛する人を腕枕で抱きながら、未来を思い描き、熱心に構想を話し始めた。つくしは、その胸に顔をうずめ聞いていた。

そして、いつしか瞼を閉じた。

「寝たの?
疲れてるんだよね。仕事した後だもの。また話そう。」
それを気にすることなく、やがて類も眠りに着く。

類にとって、同じホテルの一室、1つのベッドに2人で居ることが嬉しくてならない。この時、安堵の気持ちしかなかった。


浅い眠りから覚めた。久しぶりに気持ちの良い目覚めを迎えられるはずだった。
数時間前に抱きしめた華奢な身体。もう一度求めて腕を伸ばしてみる。

「つくし?」

閉じていた瞼を見開き、隣に居るはずのつくしの姿を追う。しかし、居なかった。シャワー?トイレ?
しばし待ってみた。でも、音がしない事に気付く。

慌ててそこに駆けて行くが、姿が見えない。そして、クローゼットの服を確かめる。

「無い。」

仕事に行くにしても、せめて声くらい掛けてくれれば良いのにとショックを受けた。
力なくソファーに座り、眼に飛び込んだ一枚の置き手紙。



花沢類様

おはよう。

ごめんね。
先に出ます。何しろ自転車も役所に置いたままで、出て来てしまったから行かないと迷惑が掛かります。

会えて良かった。
近いうちに連絡します。

        牧野つくし



深刻さも伺えない自然な内容。類はホッとして読み終えた。

「何だよ。焦ったじゃないか。」

その手紙を抱きしめ、安堵のため息を吐いた。
まだ身体に残るつくしの肌の余韻。まだ足りない愛する行為。もっと刻みつけたかった。
でも、また会ったその時と言い聞かせ、バスルームに足を向ける。

その日から、1週間が過ぎたが、まだつくしからは何の連絡もない。

不安な気分になり、あの日の役場に連絡を入れた。電話に出たのは、あの日応対した職員らしく、類の事を直ぐわかった。そして、あの日の再会を見ていた事もあり、つくしの勤め先の旅館を教えてくれた。

「ありがとうございました。」

「あっ、でも・・・」

相手が言い掛けたのを焦るあまりに聞き逃し、切ってしまった類。
車に乗り込み、住所をナビにセットして走り出す。

屋号を確認し、玄関に足を踏み入れ声をかける。すると年配の女性が直ぐに現れた。
類は、自分の名を名乗り、牧野つくしと話したいと申し出る。

「電話か、ここにお見えになるか、そんな頃だと思っていました。」
思いがけない口振りに不安が過ぎる。
「エッ?」
思わず声を上げた。
「つくしに逢わせて差し上げたくても、もうここには居ません。」
一瞬耳を疑った。

「どう言うことでしょう?」
頭から冷水を浴びせられた感覚を覚えた。

「ここを出て行かなければならない訳を、むしろ私が、お聞きしたい思いです。」
「・・・・・」
その言葉に返事が出来なかった。

「あの子は、全て途中で放棄することになり、本当にすみませんと、私に言いました。町のみんなに、詫びて欲しいとも。」
つくしが言っていた女将さんが、目の前の人だと承知した。

「牧野は、こちらには、もう居ないと・言う事ですか?」
口に出したくない言葉だった。
「はい。
あなたが、役場につくしを探しに見えたあの翌日、戻って来るなり辞めたいと言われました。」
驚きは、更に大きくなる。

「帰った・・・あの後・・直ぐに・ですか?」
心の絆が、更に深まったと確信したのは、二人ではなく自分だけだったのだろうか?

「はい。何も聞かずに聞き入れて欲しいとも、言われました。
あの子がそう望むなら、余程の事だろうと、仕方なく聞くのを諦め話しを呑みました。
ですから、もうここには居ません。」
絶望が類を包む。

「あなたの事は、あの日、そのお姿を間近で見た友人から聞きました。
美形な方だったと、もう町中に知れ渡っています。
なにせ、小さな町ですから。
しかも、都会から追い駆けて来た恋人だと、誰もが周知のことになりました。仮に違ったとしても、人伝になれば、更に尾ひれがつくでしょう。」

「す・すみません。」

「いいえ。別に責めてはおりません。止む得ない事情がそうさせたのでしょうから。
それに、あの子は強い子です。きっと、周りに何を言われ聞かれても、それでどうのはありません。
今回の行動も、ここに来た時も、あの子には、思う所があるんでしょう。」

短期間の付き合いでしかない関係だろうに、目の前の人はつくしを十分理解していた。

「だから、そっとしてやってくれませんか?」
引導を渡された思いになった類。

「あの子は、言っていました。
自分がいたら、この先を狂わせるかもしれないから、これが一番の選択なんだと。
きっと、あなたを思っての言葉なんでしょ?」

「この先を狂わせる?」

「私にあなたの詳しいことは言いませんでしたが、こうしてお目にかかり、その意味が、少なからずわかりました。
お召し物の仕立ての良さや身のこなしで、客商売をしてますからわかります。
まして、あの子は自分より相手を思う子。
あっ!もう、そんな事は御存じでしょうけれど。」

類は何も返せない。

「ですから・・・申し訳ありませんが、つくしは居りません。」

「どこに・・・行ったのか・・・ご存知ですか?」
すがる思いで尋ねる。
「親元に帰ると言い残して行きました。それしかわかりません。」
相手が言う言葉が真実かどうかはわからない。

「そう・・ですか。ありが・とう・ございました。」
ただ、呆然自失でその場を離れた。

言われてみれば、確かにそうだった。自分より相手を思う性格。
追い打ちをかける言葉で、自分の元からさえも姿を隠させてしまった。

職場を捨て、大学まで休学して息を潜め暮らしていた。誰よりわかるべきだった。
でも、だからと言ってどうすれば良かったのか?

会いに行かずにそのまま居る方が良かった?いや違う。気持ちは伝えなければわからない。
だったら、どうしたら?

「会いに来る。だから、ここで頑張って。」そう言えば良かったのだろうか?

自問自答して、親元に戻ると言っていたと聞かされた言葉を打ち消す。
それが出来るくらいなら、この流れは有り得なかっただろう。しかも、それ以前にも行けないから、1人東京で暮らしたんじゃないか。と。
今更ながら、その境遇に切なさを覚える類。

「ごめん。もっと慎重になれば良かった。」

その時、メールがあった事に気付いた。
「ん?」



連絡しなくて、ごめんね。でも。心配しないで。
当分会えない。どれくらい先で会えるかはわからないけど、元気でやって行くから気にしないで良いよ。
何だか、巻き込んでごめんね。親友同士の仲もそうだし、自分の立場も揺るがしかねない気分にさせて。

なんだか、あたし自身が面倒になっちゃった。セレブの環境に馴染めそうにないし、ゴタゴタも勘弁してって感じ。
静かに暮したくなった。

だから、会わずに町を出ることにしました。
またいつか笑顔で会おう。
じゃあね。バイバイ。



サラリと吹っ切れた内容のメール。

「つくし。
今は、そっとして欲しいんだね。
その想いに耳を貸したくないけど、少しの間辛抱するよ。
でも・・・忘れないで。俺はあんた以外はダメだって事。」

携帯のその画面に向かい話す類だった。

数か月が過ぎた。

「りんさん!ありがとうございます。
良い所ですね。
ここで、心機一転頑張ります。」

「本当にこれで良かったのかい?」

「はい。」

「あの青年。相当参ってるよ?」

「一時です。時が忘れさせてくれます。
あの人は、世界の違う人です。責任ある立場で、背負う大きさが桁違いの人です。
それに、・・・・・
それに、あたしの性に合いませんよ。」

「つくし・・・
詳しい経緯は聞かないけど、自分ばかり辛い立場に追い込むことは、ないんじゃないかい?」

「りんさん!」

「ん?」

「あたしは、ひと・・・・
ううん。何でもないです。大丈夫です。辛いことなんてないですから。
あっ!良い温泉が沢山ありますから、入りに来てください。待ってます。」

「そうするよ。それと、慣れたかい?」

「はい。皆さん良くしてくれます。」

「そう。良かった。」

「じゃあ・・また!」

「またね。」

携帯電話をポケットにしまった。
見上げれば快晴の空が広がっている。
沢山の洗濯物を干し終えて、束の間の休憩時間に懐かしい声を聞いた。

山の木々の葉が、強い風ではないが吹かれて行く。どこかへ、やがて舞い落ちろだろう。
つくしも思う。
自分も今は旅する時なのだろうと。

今は、ただ風のように過ごしてみよう。

【第一部 完】

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この記事のコメント

こんにちは^^
はい。風の行方は続きがります。今少しお待ちくださいね。
2014-10-06 Mon 12:52 | URL | ルナミミ #-[ 内容変更] | top↑
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