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風の行方 18 携帯電話

2014-08-18 Mon 18:55

18【携帯電話】

司はあの日の事は喧嘩にすぎない思いでいた。

だから愛しい恋人に間もなく会える事を連絡した。だが、その相手であるつくしの声を聞く事が出来ない。

就職に大学。そして・・・


つくしにも色々あるのだろうとあきらめて、時間を改めて電話をかける事を決めた。
ならば、親友に先に会おうと連絡を入れる。

「ん?
どいつもこいつも出やしねえ!」
しかし、切ったその時なぜか、これまで感じた事のない不安な思いに司は駆られる。
あの日を想い出す。

「類が電話に出ないなんて今まで一度もなかった。
いやいや・・・あいつも社会人。野暮用もあるだろう。
まさか?・・・また・・・いや・・・そんな事はない。」
自問自答。
親友が自分の恋人に想いを寄せていた事は知っている。それを封印し胸に納めた事も!
「あいつに限って!」
必死に打ち消した。


まだ携帯に連絡があった事を知らずにいる2人。
目の前の心躍る料理に舌包みを打ち、初めての2人きりで過ごす浴衣姿の夕食。
つくしには、この所の事情を全て癒される思いでいた。

類にしても、これ程一緒にいる時間が幸せな気持ちにしてくれるのだと改めて実感する。
『愛しい。離せない。渡せない。』
それが全て。


「どうか・・した?」
「ん?・・アッ、ううん。ごめん。お腹が一杯でボォ~ッとしたみたいだ。」
つくしに声をかけられ我に返る。
「そうだね。何だか眠いかな。」
眠いという類の言葉につくしが反応する。
「ん?
アッ!!!
あのね、そ・そう!ホ・ホントに眠くて!!!」
その慌て振りが可愛く思え、類は笑みが零れた。慌てる理由が手に取るようにわかるからだ。
「心配しなくて良いよ。まだ、無理はしない。司にも話さないとね!」

「ごめんね」
「ううん。
今こうして居られる事が何より幸せだから。」

「ありがとう。あたしも、ここに居られてみんな癒された。」
「ヤッパリ何かあったんだね?」

「ううん。」
類は、ないと頸を振り、うつむかせた顔をジッと見つめた。強く生きてきたつくしでさえも、側で支える相手がいかに必要か思い知る。
なぜなら・・・この人は、自らそれを熱望できるタイプではない。自分を抑え堪える性格。
遠い場に居る恋人では、おそらく支えきる事は出来ないと。類はそう思えた。

夕食を済ませ、食事処の個室を後にした二人。
「さあ!」
類はつくしに手を差し出す。すると、頬を赤らめながらもつくしは笑みを浮かべた。
「う・うん。」
その手に自分の小さな手を添える。

「冷たい!」
「あったかい!」
つくしの手の冷たさに驚いた。
「どうしてこんなに冷たいの?」
「自分では解らないよ。」
キョトンと類に言葉を向けた。
「アッ!当てようか?」
「う・うん。」

「もう片方を貸してごらん。」
「うん。」
つくしは類の言う通りに差し出す。すると・・・その両手を類の手が包み込む。

「俺に、こうして温めるチャンスをくれる為さ!思う存分握れるもの。」
「エッ!も・もう・・・・・」
つくしが、ほほを赤らめ、手を引き抜こうとするのをしっかり離さず、類は真剣な眼差しで言う。

「歩くのに両手は握れないから片手を放してあげる。だけど、この手は放さないよ。
それに、これからも誰にも握らせないから。
いい!この手は俺だけのもの。」
言われたつくしは、声も出ないくらいに胸がドキドキ躍り出す。
「う・うん。」
小さくうなずく顔は、桜色の笑みが表れた。その返事に天使が微笑む。

この後、携帯音で一気に現実に引き戻されようとは想わずに・・・・・

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