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好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

風の行方 17 戸惑いの中で

2014-07-05 Sat 14:00

17【戸惑いの中】

愛しい人に重ねた唇。
これまで押し殺してきたひそかな思い。だから尚更に放すことができない今の類。

その腕の中で小刻みに震えるつくし。

類の唇は、更に思いを伝えようと先を急ぎ首筋を滑って行く。

「アッ・・・」
思わず洩れる小さな声。それが類の耳をくすぐり、尚のこと気持ちを煽る。高鳴る思いが、抱き締める力を強めさせてゆく。
「ま・待って!」
戸惑いで言葉が出なかったつくしが、ようやく唇の自由を許された中で、囁くように言った。

「待てないって言ったら?」
抱き締める腕の強さはそのままに、滑らせる唇を止めてつくしを見つめる類。その瞳を見つめられず、うつむき加減で話すつくし。
「か・・からだ・・・キレイに・・したい。」
今の類には、お出の中に納まる愛しい相手を放す余裕などない。
「気にしなくてもいい」
すると、うつむいていたつくしが、真っ直ぐに懇願する瞳を類に返してきた。
「ねっ・・お願い!」
その真剣な瞳に押され、スッーと息を吐き瞳を伏せた類が瞼を開けて、つくしに笑みを見せて承諾した。
「わかった。」
好きな相手を無理やり自分のものになどできる筈はない。思いを一つにした時でなければ意味がないと言い聞かせる。

「ここの部屋風呂は、露天もあるから入るといい。」
腕を緩めると、つくしがやっと笑みを返した。
「うん。」
小さな身体を、もう一度抱き締めてから、熱い腕の中から解放した。
「入っておいで!」
「うん。」
つくしの姿を見送った類。

今夜の成り行きは、ここに来た以上解っているつくし。それでも、拍動は予想以上に高鳴っている。これからを想うと戸惑いは否めない。
好きだと言う気持ちに気付き、気付かぬ振りをこれまでして来た胸の内。
それが、今夜・・一線を越えようとしている。

別れたと自分では思っている司との関係。
つくし自身では、あの時、別れを言ったつもりだ。ただ、その顔を見ながらケジメを付けなかった事を、なぜか今は、後悔していた。

ただの喧嘩と捉えているかも知れない恋人。だとしたら・・・これ以上は背信行為。
それを思うと心は揺れる。けれど、『初めて』の自分は愛する人に贈りたい。そう想う気持ちを考えれば、これ以上は、類に対して拒みたくない。

解放され、まだ震えは納まりきってはいない。その中で、服を脱ぎ去り、夕焼けに照らされている露天風呂に踏み入れる。そっと身体に湯を掛け、その温かさを身に沁み渡らせた。それは冷えた身体にはピリッと痛みとは違う感覚を覚える。
清める様にその後も湯を掛け、そしてゆっくり身体を湯船に沈めた。

類は、既に気持ちを決めている。
でも、つくしには、気持ちに戸惑いがあるのも確かな事に想えた。まだ、無理はさせられないと。
ただ心に定まった一つのケジメ。
司には、帰ったら話しをしようと決めている。成り行き次第では、NYに行く事も考えていた。

類が選んだ旅館は、高台に位置しているお蔭で、全室平屋であるにも拘らず、部屋の窓辺から海が見渡せる。
「もう・・・自分に嘘は付けない。
あいつは渡せない。俺が側で恋人としてあいつを支える。」
今、眼下に広がる、その大海を見つめ、類はきっぱりと言った。

なかなか出てこないつくし。高校時代を思い出し、不安が過ぎる。大河原滋の別邸の風呂場で倒れた時のことを。
本当は、中に入り確認したい。でも、それを堪えながら、風呂の扉に手をかけ、小さく開けて中の様子をそっと窺った。
「大丈夫かな?」
すると、中から聞こえる水音。倒れてないと安堵して、扉を閉めて、その場を離れた。
「フッ。きっと、動揺してるんだろう。
つくし、焦らないことにすから。気持ちを確認できた今。今夜は、側にいるだけでいい。」
見えないつくしの姿を思い浮かべ、類は呟いた。

そして、その数分後、髪を濡らした浴衣姿のつくしが、扉の向こうから姿を見せた。
「待たせてごめんなさい。」
その声に視線を向け、ドキッとする。
頬を薄紅色に紅潮させ、艶やかに光る唇。用意されていたゴムでひとつに髪を束ねた姿。まだ、見たことのないつくしが、類の目の前にいる。

すぐに駆け寄り、思い切り抱き締めたい。でも、それをしたなら、堪える決心が揺るぐ。その気持ちを押し留め、平静を装うことを選んだ。ゆっくり立ち上がり、笑みを見せつつ、つくしに返事をする。
「ああ。今度は俺が入って来るね。そしたら夕飯食べに行こう!」
笑顔を見せてはいるが、いつものつくしのそれではないことは、類には直ぐわかる。
「う・うん。」
すれ違い様に、熱を帯びている肩に、そっと手を置いた。掌から伝わる温もと、石鹸のいい匂いが、類の胸を刺激する。

そして、また数分後。
類が浴衣姿で現れ、それを間近にしたつくしが言う。
「似合うね浴衣・・・でも、少し短いみたい!」
「うん。長身の日本人は、規格外なのかな?」
「うん。そうかも。」
他愛無いやり取りがうれしい二人。

「牧野・・・可愛い。
さっき・・・言おうとしたけど、言えないまま風呂に行って後悔したよ。言えば良かったって。」
凝視される類の瞳が熱くて、ドギマギが再び呼び起される。
「あ・ありがとう。なんだか・・・照れる。恥ずかしい。」
「良く似合うんだから、胸を張って!」
「・・・・・」

「さあ!食べに行こうか。お腹空いたろ?」
「うん。」
類は、つくしの手を握り、2人は部屋を後にした。

この時、つくしのバッグの中の携帯が鳴っているのには気付かずに・・・・・

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コメント

★ Re: NoTitle

> こんにちは、はじめまして、類が大好きでよくおじゃまさせていただいています。風の行方で類はこの後どうなるのか気になって気になって続きがみたくて今日こそは・・・と思い毎日おとづれています。頑張ってください、楽しみに待っています。

こんにちは。スムーズに更新できずにすみません。頑張りますので、よろしくお願いします。

2014-08-19 Tue 23:10 URL | ルナミミ #-[ 内容変更]
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