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好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

風の行方 14 2人の時間

2014-04-13 Sun 02:00

14【2人の時間】

突然の訪問者がくれた幸せな時間。

それは、重かった気持ちを嘘の様に軽くしてくれた出来事だった。



帰り際に類から、明日か明後日の何れかに会えないかと聞かれたつくし。

「うん。だったら、明日が良いな!」
なぜか躊躇せずに、直ぐに応えていたつくしだった。
「うん。それじゃ 朝迎えに行く。」
自然な流れの2人の会話。
「うん。待ってる。」
素直に返事をしたつくし。

路上に駐車して、つくしのアパートの前まで歩いた。だから交わせた会う約束。

「行きな!ここで見てるから。」
到着していたアパートの前。足を止めた2人。類が隣に顔を向けて声をかける。
「う・うん」
今夜は今まで以上に癒させてもらった。そのせいか、つくしは類に少し名残惜しい気がした。一緒に居ると心が落ち着く。だからだろうか、部屋に行くべき足を留めさせていた。

「牧野。明日の為に早く身体休めなよ。」
「うん。今行く。また明日ね!」
「ああ。」
類に向けて笑顔で返事をすると、つくしはアパートに入って行った。本当は振り返りたかったが、あえて後ろを見ずに中に消えたつくし。いつもと変わらない態度を装った。でないと、今夜はその胸にすがってしまいそうに思えたからだ。

恋人の司とさえも交わした事のないやり取りが類とは幾つかある。恋人の親友で、先輩後輩と云うだけの2人の関係なのに。
だから思う。いつまでこうして居られるのだろうかと。

つくしは、急いで部屋に入ると窓辺に立った。でも残念ながら部屋の位置からは、その姿は見えない。ただ、車の往来がない静かなせいで、遠ざかるその足音が微かに聞こえる気がした。
つくしは呟いた。
「お休み・・・花沢類。」

この晩は、眠りたいのに寝付けないつくしだった。会う約束のせいとも、久々に会えたせいだとも思える。
「好き?あたしが花沢類を?ん・な訳ないじゃない。道明寺の親友で、高校からの先輩後輩。それがあたし達なんだから。」
誰に言うのでもない言葉。一人言い聞かせるように口にする。

思い付いたように台所に立ち溜息が洩れた。
「明日お弁当作れないや!何も材料らしき物がない。アッ・・・おにぎりなら!」
なんだか考えるだけで楽しい。

明日の為、眠れる様にホットミルクを作り飲んで布団にくるまった。やがて身体が中から温まり、一週間の疲れが瞼を閉じさせてゆく。張りつめた心をほぐし、クタクタに疲労しているつくしの身体はいつしか眠りについていた。


早朝目覚めの良い朝を迎えたつくし。
寝る前に考えていた通りにおにぎり作りに取りかかった。ご飯が炊けるまでの間に身支度を整え手順はスムーズ。
ただ、会うと約束をしたものの、何をするのかもどこに行くのかも話しに出なかった。

支度を思案していて思い出す。それは、去年の休みの日にぶらり入ったデパートのヤングファッションフロアでのこと。
ふと見たブティックハンガーの値札が目に止まった。シーズン終了バーゲンで更に売れ残ったオフホワイトのワンピースがつくしの財布を開けさせた。
サイズは9号だが小さめにできているせいで、人気のデザインだが売れ残ったと見ていたつくしに店員が言っていた。
華奢なつくしに店員が試着を勧めた。それで買う気になったワンピース。オーダーの様に身体に合った。しかも、1万円近かった値札は80%OFFの赤字になっている。
「来年着よう」
それで手に入れた1着。でも、すっかり存在を忘れかけていた。類との約束のおかげでその存在を思い出し、今は袖を通している。

そして、その待ち合わせはアパートの前。支度を済ませ外に飛び出した。
「おはよう!」
つくしが姿を見せると既に待ち構えていてくれた類から声がかけられる。
「おはよう!」
視線を合わせ笑顔が触れ合う。

「すごく可愛い」
さらりとつくしに褒め言葉をかけた。
「あ・ありがと」
慣れない褒め言葉にハニカミながら頬を染めた。しかも、着慣れないミニスカートのワンピースが急に気恥ずかしくなり足を速めたせいで態勢を崩してしまった。
「アッ!」
つくしが前のめりになったその時だった。
「危ない!」
直ぐ様類が駆け寄り、その身体を支えた。類に受け止められ、さながら抱き合う状態になった2人。

一瞬だったが、類の腕の中で強く抱きしめられたように思えた。

「大丈夫?」
気のせいだと思う様な、いつもと変わらない類の態度に勘違いだと自分に言い聞かせた。
「う・うん。あ・りがとう。」
腕から離れて礼を言う。

「何か用意してくれたの?」
つくしの手荷物が目に入り類が尋ねた。
「おにぎりを作って来たんだ。ごめんね。それしかないけど・・・」
その手下げを持つとばかりに右手を差し出した。
「ごめんは変でしょ。それに、そう言うのってすごく嬉しい。牧野のおにぎり好きだから。」
互いにそんな弾む会話の1つ1つが胸を打つ。

「いい所に案内するね。きっと牧野が喜ぶと想う。」
「うん。楽しみだな。」

類が運転する車は都心を離れ郊外へ向かっていた。道路事情に疎いつくしには、どこに向かっているかはわからない。
「いい景色だね。でも、何だかすごく遠い所に行くみたい。」
窓の外に流れる景色を見つめて言った。

「このまま2人で、どこか遠くに行く?」
「エッ!」
ハンドルを握りながらの何気ない言葉に一瞬耳を疑ったが、つくしは単純に今この時だけ遠くに行こうかと言われたものと解釈することにした。言った類の思いが、つくしの考えより深いものとは夢にも思わず。
「夜までに帰れれば、花沢類に任せるよ」
「夜までに・・・か」
「ん?」
「ううん。そうだね。夜までに家に送るよ」
「うん」

やがて山並みが視界を覆う。更に山頂に向かって車を走らせて行った。次第にそれまでより空気が澄んでいるのがわかる。つくしがパワーウィンドウを下げてみると外気の低さを肌に感じた。
「ウッ!空気が冷たい。」
その冷たさを実感して思わず肩をすくめた。
「うん。でも空気が綺麗だって気がするだろ!」

「うん。すごくする。」
「もう着くからね。それから、牧野後部座席に2人分の上着あるから着ると良いよ」
訪れる場所の気温を考え用意してくれていた上着。後部座席に置かれていた上着に、その言葉で初めて気づいた。
「ありがと」

つくしは礼を言いつつも、窓は閉めたし寒くないと類に告げ、窓の外の景色に夢中になっていた。それから15分ほどで類の云う目的地に到着した。

そこは展望台の駐車場だった。と言ってもコンクリートの敷地ではない。土が眼の前に広がる大きな広場。その中にぽつんとベンチがひとつだけあった。
視線を広げて見ると柵があるのに気付く、それを境に芝生に匹敵する草が生い茂る草原が向こう側に広がっていた。

車から降りたつくしが言う。
「さっきより寒くない」
来る途中の車の中で感じた冷たい空気が薄らいでいる。それを口にした。
「走っている時だったし、山や樹木が日を遮ってそう感じさせるからね。ここは、日差しを充分得られるからだと思うよ。ただし、日が沈み出すと一気に寒いから上着は必要だよ」

用意した上着をつくしの肩にかけ、自分も身に付けた類。
「うん。似合う。牧野に似合いそうなの探した甲斐があったね」
羽織らせたパーカーが今日の服装に合っていたせいもあり、尚更類の表情は明るかった。

8時に出発して2時間のドライブで到着した。今の時刻は10時を少し回ったばかり。日差しもまだ充分感じていられる。それでも、今日のつくしは春物の薄手のワンピース。確かに芝生にでも座って静かにしていたら肌寒さを感じるかもしれない。類の用意してくれた上着は必需品だ。
それに、セレブな花沢類の用意した上着だから、その素材の良さは言うまでもない。つくしには、頭上に広がるスカイブルーにも似たパステルカラーのジップアップパーカーを用意した。類自身はブランド違いではあるが、デザインは同じパーカーで、オフホワイトカラーだった。偶然にもつくしのワンピースとお揃いのようにさえ思えている類だった。

類が車からハーフケットを出していると、はしゃいだ声に呼ばれた。
「ねえねえ!あそこにシート広げておにぎり食べよう!」
草原を指さし満面の笑みで言っている。
「うん。良いね。」

連れて来た相手が喜んでいる姿は嬉しい。言われた方も笑みが自然に表情に出る。その相手に駆け寄り、ごく自然に互いに手を取り合い目的の場所に向かった。
選んだ場所に着くと、つくしは用意して来たシートを広げた。類も手にしていたハーフケットの1枚をつくしの座る場所に敷いた。
シートを使わなくても問題ないかもしれないし、草が生い茂るお陰で肌に伝わる柔らかな感触が心地良いとも思えるが用意して来た物は最大限に利用する。まして、今日のつくしはスカートだ。類はサッとつくしの為に使った。もう1枚も座ったその足元にかけた。
「ありがと」
気付かないふりをしたが、礼を言うその頬が真っ赤だった。


「はい。好きなのどうぞ!」
つくしは手下げから容器を取り出し類に差し出した。そこには、海苔付き・ふりかけ・ゴマ塩の合わせて6個のおにぎりがあった。

「花沢類は、おにぎりなんて大よそ縁がないだろうけど、こう云う青空と草原の中では、すっごく合うし景色がご馳走になるよ。ちなみに中身は、梅干し・玉子焼き・おかかのどれか。さあ・・どれにする?」

類にとって、場所や景色より、その食事の内容よりも、それを共にする相手が重要。好きな相手となら、それが何よりの贅沢になり、食欲も増す。3個をあっと言う間に食べていた。
「これは、俺のね!」
つくしが2個食べて、1個がまだ容器にあるのを確認して指差した。
「花沢類もこう言う場所ならよく食べるんだね」
相変わらず鈍いおかげで食欲の理由に気付かない後輩。だから気付いても気付いてもらえなくても、好きな相手の嬉しそうな顔を見たいから言う。
「これは俺のね。」
「うん。しかたないな。3個づつだけど、花沢類にあげる」
食べながら、懐かしい話しで盛り上がり、笑い合う2人。

「ア~・・・満腹。」
「うん。1個が大きかったからかな。あたしも2個で満腹」

「ねえ   少し昼寝しない?」
お茶を飲み終え、ごろりシートに身を横たわらせて言う。
「クスッ・・・花沢類の十八番!」

「これが幸せな時間なの。牧野は寝ないの?」
長い腕を頭の下で組ませ、穏やかな温かさの中で瞳を閉じながらノンビリした口調で尋ねる。
「うん。この景色観ていたい。」
つくしはハーフケットの下で両足を投げ出し、身体一杯日差しを浴びるように後ろに両腕をシートに付けて身体を支えた。
「そっか。それじゃあ・・・ここを借りよう!」
「エッ!」
類はつくしの足に頭を乗せて気持ち良さそうに瞼を閉じた。
その姿はまるで恋人同士に見える2人。でも、そうではない2人の関係。



「司様!ご搭乗の用意が整いました。」
この一声から次のステージの幕が開く。
恋人である男子の予期せぬ行動が、その相手の日常を変えようとしていた。そして、親友の日常も。

好きな相手への思いが自然に態度や言葉に現れ笑みがこぼれる。
「ああ。今行く。」
急に空きの時間が持てた道明寺司。事前に帰国を知らせる事なく自家用機で飛び立とうとしていた。

「いきなり俺様の姿を見せてやるからな。きっと、あいつ驚くだろうな!」
喜ぶ顔を思い浮かべ、離陸した機体の窓から眼下に広がる雲海を見つめて呟いた。


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