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好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

風の行方 11 上司と同期

11【上司と同期】

働きながらの大学生活が始まった。それと同時に社会人としてもスタートラインに立ったつくし。

贈り物のスーツを身にまとい、まずは2週間の職場の研修を受ける。

配属された先は総務。





短期間の新人研修中、指導された事をつくしは必死でメモをして身に付ける努力をした。何しろ大卒に交じっての就職。高卒だからと云う指摘はされたくない。
つくしの職場に配属されたのは新入社員4人。大卒男女3名と高卒のつくし1人だった。

自慢げに親や環境の話しを始めた矢田すみれにつられ、男子2人もすみれ同様自分についての話しをした。引け目がある訳ではないが、つくしは家族構成だけの話しにした。わかったのは、いずれもつくしとは異なる環境にいたメンバーだと云うこと。
望月保 K大卒 2人兄弟二男 会社勤務の父・教師の母 180cm 
渡部誠 M大卒 3人兄弟三男 商店経営        178cm 
矢田すみれ 女子大卒 2人兄妹 会社経営       165cm
ただし、その性格まではわからない。

当初、大卒とは言え女子がもう1人いたことを嬉しく思ったつくしだったが、間もなく撤回する事件が起きる。

同性のすみれは見るからに今風の女子大生。
ヘアもメイクもネイルさえも洗練されていた。つくしの知る高校時代の英徳の女子学生とまではいかないが、つくしとははるかに違うことは直ぐに理解できた。
男子2人は、F4と云う逸在さえ知らなければ、そこそこ美形の部類に入る。1人は文学青年風で、もう1人は体育会系。ここでも、英徳同様に平凡と云う言葉は、つくしに当てはまる言葉になった。そんな4歳違いの3人と社会人生活がスタートしていた。

事が起きたのは、入社して少し経った頃だった。
入社以来一番に出社していたのはつくし。先輩方が姿を見せ出す間際に滑り込むすみれだった。なのに、この日はつくしが出社すると既に出勤していたすみれが慌てていた。

「どうしたんですか?」

つくしが、その狼狽ぶりに声をかけた。すると、すみれがつくしの視線を遮るように身体でデスクを隠した。しかし、隠しきれない部分が身体からはみ出している。自然にデスクに視線が行き着いた。
むしろ、何食わぬ行動をしていたなら、つくしは気にしなかったかもしれない。

見えてしまったのは、デスクの上に置かれた書類の横に広がる茶色の液体だった。
新人研修で説明された時、デスクには前日の書類が置かれている日もあるから、好意でも拭いたりしなくて良いと説明されていた。だから、つくしは一番に出社してもデスクは近付いたりしなかった。
それが今、上司のその場がいつもとは違う状況になっている。
しかも、相当慌てて捨てたのだろう。デスク近くのゴミ箱に有名店のコーヒーに使われる紙コップが捨ててあった。

つくしはすみれに声をかけた。
「あっ!大変ですね。お手伝いします。」
ポケットからハンカチを取り出し、液体を吸わせる為にデスクに置いた。すると、その時・・・社員が現れ始める。

「何してるんだ?」
「エッ!あ・ああ・・あの!」
手助けしようとしたつくしの方が、一歩退いたすみれよりもデスクの前に居る状況が社員たちの眼に映った。しかも、すみれは手に持つだけだった自分のハンカチをポケットに仕舞い込んだ。

その状況だけを見れば、すみれかつくしが真実を言わなければ、つくしの失態に見えるのは仕方のないことだった。だから、つくしは先輩達の鋭い視線の中で、すみれの言葉を待った。

「書類が汚れてるじゃないか!
新人のくせに、ここでコーヒーを見ながら資料を覗こうなんて有り得ないだろ?」
当たり前の言葉が飛んできた。
「牧野さんなの?それとも矢田さん?」
デスクの前はつくしだが、側に居るすみれも関わっているのを尋ねている。勿論2人でのことかも知れないからだろう。
「犯人捜しじゃないんだ。ただ、常識的な事だ。」
確かに表情は厳しいが、声を荒立ててはいない。なのに、次の言葉を聞いたつくしは呆然とした。
「わ・・・わたし・・・・じゃない・・です。」
そう・・・すみれが言った。
「エッ?」
つくしはポカンとしてすみれの顔を見つめた。

「本当なの?」
「そうなのか?」
先輩社員が2人に向かい真実かを聞いている時、総務部の課長と係長が揃って出社して来た。

「課長のデスクの前で、何騒いでるんだ?」
係長の川崎が言った。課長の半田は何食わぬ顔で自分のデスクに着く。
「やってくれたね!」
半田は、デスクを見るなり、怒るでも流すでもなく、ひと言告げる。

「済みません!!」
悪くないつくしが目の前の半田に思いきり身を屈めて謝った。
「君は、確か牧野君?」
態勢をそのままにして、つくしは半田に返事をした。
「はい。」

「知っていたのかな?君達新人が、今日から教えられる業務の資料がここにある事を。」
初耳のその内容に、つくしは下を向いたままの姿勢ながら、すみれに視線をわずかに向けると、知らないとでも云うように視線を逸らされた。そして、半田が静に話しを続けている。
「観たい気持ちは解らない訳じゃない。でも、して良い事と悪いことがある。今後は、決してないように!」
諭すように話され、半田と云う上司の懐の広さを感じていた。
「はい!!申し訳ありませんでした。」
反論もせず、ただ謝りの言葉を返した。
「みんなも、今回の事は、今後の教訓になっただろうから、これ以上尾を引かないように!」
みんなに向かい話す半田に感謝せずには居られない。
「「「「はい。」」」」
新人の不始末と解釈してくれた先輩方。しかし、二度目は違うことだけは、つくしにもわかった。
「今朝は、今のが朝礼だ。さあ。仕事に掛かってくれ!」
その号令とも言える言葉で、社員たちは席に着くと、それぞれの仕事に動き出した。

その時、平然と席に向かおうとしたすみれ。すると、半田が声をかけた。
「矢田君!君も人事だと思わずに注意するように。」
「は・はい。」
声をかけられるとは思っていなかったようで、細い肩をほんの少しビクッとさせたのをつくしは席に向かいながら眼にした。
「それから、制服がなんだか汚れているようだから、着替えた方が良いんじゃないのかな?」
含みを入れたような半田の口振りに、すみれは来て早々に眼にした時の狼狽振りとダブって見えた。
「は・・・はい。」
すみれは、飛んで行くように部屋から出て行った。つくしは、そのすみれの後姿を寂しそうに見つめた。
すみれが汚した上司のデスク上。自分の失態として片付けをしていたつくしに、半田が声を掛けてくれた。
「社会には、今迄知らなかった鬼が至る所に潜んでる。
言い難いこともあるだろうが、言わなければ窮地に立つこともある。覚えておくように。」
「は・はい。」
半田は書類に眼を通しながら言った。全て見通しての言葉だと熱くなる。その表情は穏やかだった。そして、視線をデスク下のゴミ箱に向けて、わざと近くに居るつくしだけに聞こえるように言った。
「制服など汚れてはいなかったのに、あの慌てぶり。しかも、このコーヒーショップは値段が高い。節約する者には縁の遠い店だ。」
それを聞いて、ふと思い出した。入って間もない頃、お昼休みにコーヒーを先輩社員がテイクアウトして戻って来た時に席に居た半田が自分も飲みたかったと言った。その時、つくしに同意を求めた。そして、返した言葉は「高くて勿体ないから、買えないです。」だった。他の人はつくしの返事を聞いてはいなかったのだろう。でも、半田はしっかり覚えていてくれた。

これを機に、同期の女子を友人にしたい気持ちは捨てた。でも、上司が半田であることに嬉しい気持ちがしているつくしだった。

「良い上司で、ホントに良かった!」ひとり小さく呟いた。


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この記事のコメント

意地悪な同期の中でのつくしちゃんの
社会人新生活にハラハラしましたが、
良かった~・・
つくしちゃんの味方がいて(^_^;)
しかも上司で・・
続きのお話楽しみですv-238
2014-01-27 Mon 09:14 | URL | ふたみ #sodHlKJQ[ 内容変更] | top↑
もう忘れられていると思いますが、
ダークな類が好きなHIROです(^^;;

ルナミミさんのお話が久しぶりに読めて、嬉しいです!

また来ますね!
2014-01-28 Tue 01:29 | URL | HIRO #83DHzmT2[ 内容変更] | top↑
> 意地悪な同期の中でのつくしちゃんの
> 社会人新生活にハラハラしましたが、
> 良かった~・・
> つくしちゃんの味方がいて(^_^;)
> しかも上司で・・
> 続きのお話楽しみですv-238


ふたみ様

楽しんで頂いて嬉しいです。
なかなか更新出来ずにすみません。
これからもよろしくお願いしますネ。v-298
2014-03-23 Sun 22:21 | URL | ルナミミ #-[ 内容変更] | top↑
> もう忘れられていると思いますが、
> ダークな類が好きなHIROです(^^;;
>
> ルナミミさんのお話が久しぶりに読めて、嬉しいです!
>
> また来ますね!


HIRO様
こんにちは^^
しっかり覚えておりますよe-319
是非またお越し下さいネ
コメも楽しみにしています。
2014-03-23 Sun 22:29 | URL | ルナミミ #-[ 内容変更] | top↑
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