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風の行方 3 ホイッスル

2012-12-02 Sun 13:10

3【ホイッスル】

つくしが三条桜子に英徳に進学をするかしないかを聞かれた。
つくしは、その意思がないと伝えた。すると瞬く間に美作あきらや西門総二郎の耳に入り、更にその美作達と共に大学に籍を置く大河原滋の耳にも届いた。

そんなある日の放課後。帰ろうとしていたつくしを呼び止めた桜子。つくしに形相を変えて尋ねる。
「先輩。道明寺さんに出して頂かないんですか?」
それに反するように淡々とつくしが返した。
「あいつは関係ない。」
更に声を大きくしてつくしに聞いた。
「エエエッ~無くは無いでしょ?もしかしたら、伴侶となる人が働きながら大学に行ってると世間に知られたら、道明寺さんが嫌な思いをするのじゃないですか?」
鋭い視線で桜子を見るつくし。
「仮にそうだとしたら、止めてもらって結構。」
視線を逸らし肩をすくめるように返す。
「アラッ!先輩 随分強気ですね?」
つくしも視線を逸らし視線を今度は上に向けて言い放つ。
「そうじゃないよ。ただ・・・あたしはこうするしかないの。あんた達のように、有り余るお金を持ち合わせていないんだから仕方ないの。
どう?解った?
それじゃあ。あたしはバイトがあるからそろそろ行くよ。じゃあね!!」
最後に少しだけ口角を上げて桜子を見つめて言い、踵を返すと背を向けながら手でバイバイと告げて歩いて行った。
「もう!先輩ったらホントに意地っ張りなんだから。甘えれば良いのに!」

2人を離れた所から見ていた2人の男子。つくしの後ろ姿を見つめる桜子の両脇に美作あきらと西門総二郎が並んだ。
「お前の気持ちも解るが、あれじゃマスマスあいつは乗らないぜ!」
「アッ!西門さん。」
「ホント。」
「美作さんまで。・・・で・でも、こんな良い学校に居て、しかもセレブの中でも頂点の彼が手を貸そうとしてるのに何で頼らないのか?わざわざ苦労をしようとするのかわかりません。」
手で気持ちを現すように頭や顔に当てながら想いを表現する桜子。
「しょうがないさ。それが牧野の生き方だ。俺らがとやかく言えないよ。」
あきらが言う。
「私が先輩なら、直ぐお願いするのに。」
「そこがお前と牧野の違い。」
今度は総二郎が言った。
「ええ、ええそうですよ。解ってますよ。ん?でも、どう言う意味です?」
あきらと総二郎は顔を見合わせ苦笑いをして歩き出す。
「何なんですか?その意味有り気な笑い。失礼じゃありません?ねえ・・・お二方?」
先に歩き出した2人の後を追いながら尋ねる桜子。

その頃、つくしも1人言われた事を噛み締めていた。
「しょうがないじゃない!
自分の家は貧乏なんだから。でも、だからって人の懐は当てにしないのがあたしなの。」
怒りに任せ1人でブツブツ文句を口にして発散させていた。すると携帯が鳴る。相手は類だった。
一瞬今の気分の時に出ようか出るまいか考えて、そして出るのを選んだ。
「はい。」
悟られない様に返事をしたつくし。
「牧野!俺。面接出来るよ。」
明るい声が返って来た。
「エッ!ホント?」
それに合わせる様に明るい声で返した。
「ああ。明日迎えに行くけど、それでどう?」
「うん。ありがとう。宜しくお願いします。」
「支度は?」
「制服で良いよ。」
「良かった。買う様なら、大変だった。」
「その必要があるなら、俺が用意してあげる。」
「ううん。ダメだよ。」
「クスッ。また、牧野のダメ出しが始まった。」
さっきまでのウサが嘘の様に消えていたつくしだった。

こうして、つくしの将来が掛かった面接が決まった。良いも悪いも何も今は解らないその中で未来の扉が開こうとしていた。
この日バイト先の団子屋で都立高校に通う親友の松岡優紀にそれを話した。
「つくしが大学を断念しないのは嬉しいけど、そうなったら会い難くなるね。」
喜びたい思いとすれ違いになるこれからを思い、寂しいと言ってくれる親友の姿に目頭が熱くなるつくしだった。
「うん。優紀も大学に行くんだし早々今迄の様には行かないよ。でも、あたし達は幼稚園からの親友。絆が固いもの大丈夫。」
「うん。休みには会おうね。つくし!」
「うん。絶対会おう!優紀。」

つくしはその夜、銭湯帰りに空を見上げた。
いつもは見えないそこに星が煌めいているのを見つけポツリと話し出す。
「いつもは見えないお星様。明日の面接をどうか受かる様に導いて下さい。」
キラリ
返事をしてくれた様に、その星が瞬いた。
心躍る想いを抱え温まった身体で家路に着いた。なぜかワクワクする時めきを認めながら。


翌日、約束通り類が迎えに来てくれた。2人を乗せた車は花沢物産に向う。
会社近くで車を止めさせたつくし。着いてからは1人面接を受ける会議室に行きたいと頼んだ。類は仕方ないと苦笑した。
「俺が行くのが何で嫌?」
「確かにセッティングをしてもらった。コネかも知れない。でも、ここから先は自分で行きたい。」
「解った。俺は近くのカフェにでも行ってお茶してるから終わったら連絡して。」
「うん。ごめんネ。花沢類。」
「いいよ。頑固な牧野、嫌いじゃないから。」
「もう。」
「行っておいで!」
「行って来ます。」
つくしは車から降りると、聳え立つ威圧感を感じる程のビルを見上げ大きく深呼吸をした。そして、その中に背筋をピンと張り歩いて行った。
類に言われた通り受付で面接に来た事を話すと、受付嬢が連絡を入れ承諾を取り付けた。促される様にエレベーターに乗り込んだ。小さな胸の鼓動が張り裂けんばかりに高鳴り頬を紅潮させている。
向かう先は12階会議室。
エレベータ~を降り、それを示す方向に進んで行った。
「あった!ここだ。」
再び深呼吸をしてドアをノックする。
コンコン
「どうぞ!」
「失礼致します。」
中に入るとそこには想像していた風景はどこにもなく、応接セットに1人の責任者が笑顔で待ち構えていた。
少し緊張が解れる気がしない訳ではないそこに名前を告げて指示を待った。
「まあ、お掛け下さい。」
「はい。失礼致します。」
「驚きましたか?」
「はい?」
「貴方の顔が、そう言っておられた。」
「アッ!・・・いいえ。
面接が初めてで、テレビで観た事がある2~3人の試験官を前に座るものとばかり考えていたものですから。それで・・・」
「確かに本来でしたらそうなると思います。でも、今回は事情が違います。」
「はい。」
「でも、だからと言って特別ではない事を、予めお伝えして置きましょう。」
「はい。その方が嬉しいです。」
「では、そう言われながら特別に話しを通されたのはなぜですか?」
「・・・そうお聞きになるのは無理もありません。正規の面接の時期ではないこのチャンスを頂いている訳ですから。
でも、それも天運と思っています。芸能人が、街でスカウトされて芸能入りする人も有れば、地道にその機会をオーディションで何百人の中から選ばれる道で進もうとする人もいる。でも成功するしないは、それで決まるものじゃありません。天運だと思っています。
私がこの機会を得られたのは、誰でも与えられるチャンスではありません。私だからだと思っています。今回、この面接をさせて頂く事に抵抗がありました。でも、今は違います。機会を得られて幸せです。
私事ですが大学に行くお金がありません。かと言って行かない道も選べません。
ですから、こちらに就職させて頂いた後も、残業も出来ませんし、仕事だけを優先する事も無理です。
でも・・・・・その中で、与えられた事は全力で勤めます。掃除や賄いの仕事も喜んでさせて頂きます。
ですから、どうか私をここで使って下さい。」

沈黙の時間が流れた。

深々と頭を下げたままのつくし。声が掛かるのをその姿勢で待ち続けた。
「頭を上げて下さい。」
ゆっくりとした穏やかな口調で話す目の前の試験官。
「はい。」
瞼を閉じたままで話すその人につくしは諦めを感じた。
《やっぱりダメか。でも、自分の気持ちは伝えられた。悔いはない。》
何もその先を言わないその人につくしから先に話しをした。
「ありがとうございました。
今日、こうして会って頂けただけで感謝しています。大卒の方でも入社が困難なこちらに高卒の私が面接だけでも出来た事が幸運の何物でも有りません。

ありがとうございました。」
最後に立ち上がり最敬礼をして歩き出した。

「牧野さん!」
声を掛けられつくしは振り向いた。するとその人は真っ直ぐにつくしを見据え口を開いた。
「短気は損気と言う言葉をご存知ですか?」
「エッ!」
「まだ何も私は言っていない。勝手に解釈するのは良くないと思いますが違いますか?」
僅かに光が差した様な気がした。
「す。すみません。」
慌てて座り直したつくし。

「貴女は少々短気で勝手に想い込み易い所があるようだ。それでは好印象も逆転し兼ねない。纏まる商談も水の泡にされそうだ。」
「はい。」
《何だ。結局ダメだと言う理由を聞かされるだけなんだ。》
喜んだのも束の間。そうではないのだと・・・うな垂れた。
「今のその諦めの態度も頂けない。最後まで真剣に耳を貸す。それが相手の考えを反転さえる機会を作る。」
「はい。申し訳ありません。」
「そう。その姿勢。ハキハキと相手に意志の強さを伝える瞳の輝き。企業は人と人との繋がりで成り立っています。勿論、それでも収益・環境・考えで、それが叶わない事もある。でも最低限、仲間同士は心と心が通い合わなければ良い仕事は出来ない。
短気は損気!肝に銘じて励んで下さい。」
「はい。」
返事をした後で、どう言う意味かを廻らない思考回路をフル回転させてようやく気付く!

反対の部屋に続くドアの前に行き掛けているその人に尋ねた。
「あのぉ~・・・それは、ここに勤めさせて頂けると言う事でしょうか?」
爽やかな笑顔を振り向させ答える面接官。
「牧野さんの天運説に興味が湧きました。大卒者でも、そんな斬新な答えをする人が出てくれると良いんですが。
今回の事は、貴女自身の力で手に入れたと自信を持って下さい。期待しています。
これから何をして頂くかは、まだ何とも言えませんが。」
「はい!!ありがとうございました。頑張ります。」
「4月、このビルの何処かでお会い出来るのを楽しみにしています。では。」
その背中に最敬礼をしたつくしだった。
バタン
その音は、つくしのこれから先が始まるホイッスルの様な気がした。言い様のない湧き起こる震えで全身に鳥肌が立つ。
「4月から、ここの何処かで動いている自分。花沢類、ありがとう!」
周囲を見渡すつくしだった。




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