Destiny 11 合否通知
11【合否通知】今日は留学の合否の発表の日。
朝からソワソワしてしまう。自分としては手応えはあった。でもそれは、あくまでも自分の感覚。ミスがないとは言い切れない。その日の放課後に坦任の元に行く事になっていた。そんな中、携帯が鳴った。「アッ!優紀だ。」この所、バイトを休んでいる為に親友の松岡優紀には会えずにいた。「優紀・・・・・心配して・・・電話くれたの?」「うん。もう解ってるの?」「ううん。これから先生の所に行くんだ!」「それって・・・張り出しされてるの?」「ううん。あたしだけだから、書面で受け取るんだって!」「そうなんだ。気になって何も手につかないよ!」「ありがと!解ったら知らせるよ。例えダメでも。」「ダメな訳はないよ!でもさ、正直言うと寂しいんだ!だからかも・・・・・・」「優紀・・・・・」「ごめん。とにかく待ってるよ・・・つくし。」「うん。」『優紀・・・・・ありがと!』もう一度、心で呟いた。意を決して坦任の元に歩き出す。もう廊下にも、学生の姿は数える程。この日なぜか、クラスメイトは早々と帰り支度をして教室を離れて行った。つくしは思う。ここまでの数日間、ようやく溶け込めた様に思えたクラスの中での関係は、思い過ごしだったのかと。うな垂れ掛けた・・・その時だった。職員室の前に、見慣れた顔がアーチを作っていた。「エッ・・・・・エエ・・ッ?な・な・何?」クラスメイトが、合格を祈り激励の声と笑顔を向けている。「牧野さん・・・大丈夫!きっと合格してる。」「そうそう。牧野さんの頑張りを今日まで来たもの。」「ああ。始めは貧乏人の・・・あっ、ごめん!もう、そうは思っていないよ。ここに居る僕達は。ホントに!!」「うん。今は、誇りに思うよ。みんなが付いてる!」「うん。ここで、祈ってる!!」「み・みんな・・・・・ありがと!すっごく・・・・・嬉しい。ホントに・・・・ありがと!」信じられない声援の中、熱くなる胸と潤む瞳で『友達』のアーチをくぐり教室に入った。担任が座る席へゆっくり進んで良くと、騒ぎの事もありつくしを迎える態勢を整えている坦任。真顔のその顔に、つくしは不安な気持ちをかき立てられた。「牧野!早く来い。」「は・はい・・・・」テレビのクイズ番組の「ファイナルアンサー?」を掛け合う司会者と回答者の様に、つくしはその状況が思えていた。「先生、そう言う顔は心臓に良くないです。早く・・・ください。」「アッ!悪い悪い。興奮しててな!つい、こっちまで。」「知っているんでしょ?」「いいや。知らない。校長と、教頭だけが知ってるらしい!」「そうなんですか?」「牧野!」「はい。」「これが、その合否の通知だ!」「は・はい。ありがとうございます!」「牧野・・・・・そそ・・その・・だな・・・」「解ってます。ここで開封して欲しいんでしょ?」「ああ。」「職員室の前にも、クラスメイトがいる以上、合否を知らせない訳には行かないでしょう!」「そ・・そう・・だな!」「じゃあ・・・開けます。先生、これお借りします。」机の上のハサミを使い丁寧に開封すると、恐る恐る取り出し、折り畳んだ用紙を広げた。無言のままの・・・つくし!一筋の涙が頬を伝う。「どうした?・・・何て・・・何て書いてある?・・・・・・もしかして・・・・・?」何も言わず、涙するつくしに力なく座り込んだ坦任。「いいさ。国立でも何でも、学費の掛からない所を2人で探そう!・・・・・なっ!牧野」「ううん。先生・・・・・受かったよ・・・・・合格した。」「エッ!」鳩が豆鉄砲食らった顔で飛び上がり、その用紙を立ち尽くすつくしから取り上げると「本当だ!・・・・・受かってる・・・・・合格してる!牧野・・・やったな!!」当の本人より、数倍興奮している坦任を見ながら、次から次へと熱い涙が押し寄せて来た。すると、待ち切れないクラスメイトが、その声を聞き付け合格を知り、歓喜の様子で教室になだれ込んで来た。口々に祝福の言葉を言いながら!「おめでとう!」「良かったね!」「嬉しいよ!」「みんな・・・ありがと!ホントにありがと!」その日は週末。来週登校すれば、英徳中に知れ渡っているだろう!これから数日間、『行き先の事で!』心ない噂がピークを迎える予感に囚われながら、この満ち足りた想いがあれば、何も怖くはないと想えていた。何人かの心配してくれる友達の所に報告の電話を入れると、見えない先ですすり声で喜んでくれる声を聞いた。何度かの連絡を終えた後、物足りなさに辛くなる。始めから気が付いている。最初に言いたかった人に・・・・・今も言えない・・・!美作あきらは『気にしないで、牧野がしろ!』そう言い、連絡先を教えてくれた。でも、出来なかった。似合いすぎる【美しい2人】が眼に浮かんでしまう!「どうしたら良いんだろう?」決めていた筈の行き先。合格した今、夢物語ではなく現実の事になったその事を、複雑な気持ちで考え始めていた。「パパとママに話しに行かなくちゃ!」行き先の電車に乗り込んだ。Destiny1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・12作品作りの励みになりますので、是非「ポチっ」とお願い致します。
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