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好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

LIE 7 取り残された想い

2011-03-10 Thu 04:30

7【取り残された想い】

師匠に指示された金曜日の5時。

あたしは、その部屋に向かってる。いつも通りインターホンで到着を知らせ、自動ドアを開けてもらいエレベーターに乗っている。

でも、なんだか気分がスッキリしない。何故なら師匠の見てはいけない場面を目撃したからだ。
師匠のそれは、本当に見た事を後悔した事ではある。でも多分・・・それだけなら事情は違ってた。

それと重なる様に、親友に彼氏が出来た。その告知も相まっての事に想う。
1人だけ取り残された感じ。

今の自分が触れ合う2人に春の到来。
しかも、親友は「会い難くなる」と遊べない状況をあたしに言った。
良く解る。好きな相手が出来たんだ。二人の時間を持ちたい気持ち。でも・・・正直寂しかった。

学校で友達を作れない状況で、唯一の拠り所。
でも・・・全く会えない訳じゃない。自分に言い聞かせてた。

そんな時に、遭遇した場面。

気にしなくて良い筈の男子で、師匠と弟子と云う関係でしかないのに。
気にするまいとしても、目撃して日が浅いせいかも知れない。憤慨する気持ちが消えずにいた。

それでも、言われた通り訪れた。茶道を習得する目的の為。あたしは、重い足取りでドアの前に立った。

ピンポーン

「入って良いぞ!」

インターホンから聞こえる歯切れ良い声。

「はい。」

きっと、顔はどこかぎこちないに違いない。
自分でも、どうしていたら良いか少し戸惑ってる。「普通にする」って云う表現が、どんな風にするものか消えてしまっていた。「ん?」それはどうしてなんだろう。再び想う。苛立つ意味などない。ただの師弟関係でしかないのにと。

そう考えている最中、目の前のドアが開いた。
「なんだ。居るんじゃねえか。おせえから何してるかと思ったぜ。早く入れよ。」

「エッ!・・・は・はい。」
考えていたせいで、少しそこにいたらしい。部屋の主・西山師匠が顔を出した。

「オイ。何か今日変だな。何かあったか?」

玄関先で壁に寄り掛かり、あたしが中に入るのを見届けてる師匠が腕組しながら指摘した。ズバリ・・・鋭い人だなと思う。
でも。
「いいえ。何も有りませんけど。」

そう答えてた。
言葉とは裏腹なのは言うまでもない。それでも、あたしが不機嫌になる理由はどこにもない。解っているのに、何でか普通に出来ない今日のあたし。

「フゥ~ン。何も無いねぇ~。まあイイや。」

広めの廊下。その人の前を中に向かい進んだ。
中は、今日も豪華な佇まい。次元の違いを目の当たりにする部屋。
きっとあたしが1人暮らしをする時が来ても、いや・・・家族がマンション暮らしをするとしてもと言った方が解り易い。その時が来ても、この部屋の半分のスペースで、しかも設えは足元にも及ばないと断言できる。
それ程までに贅沢な部屋に大学生の身で住んでいる男子。
でも・・・羨ましいと云うのじゃない。ふと、寂しくは無いのかと浮かんでた。

セレブな男子と極々平凡なあたし。今の関係にいるのが嘘みたいな事なんだ。
だって、ナンパされる容姿をあたしがしている訳でもないし、歳も違う。強いて言えば、接点はただ一つ「英徳学園」と云うだけだ。
なのに師弟関係が成立した2人。まるで・・・修行中の今は、メイドとご主人様の様な関係。
『あたしは・・・弟子と云うより・・・態の良いメイドみたいな状況だ。』心で思った。

「ヤッパリ変だ・・・今日のお前。」

あたしは、所定の位置になってしまったキッチンのシンク前で、ボーっと考え込む様に立っていた。
その顔の直ぐ前に、主が覗き込んで疑問を口にする。

「ギャー・・・な・何なんですか?め・目の前に・・・」

「ん?キスでもされると喜んだか?」

「バ・バカ言わないでください。
師匠が誘う女子みたいに、言い寄られても軽く受けてホイホイして付いて行ったりしません。」

「ん!そっか。お前・・・見たのか?」

「な・何がですか?何も見てません。そんなとこに居る訳ないじゃないですか。」

「フフッ。そんなとこ?どんなとこだよ。それに、お前の顔が「見ました」そう言ってるぜ。」

「・・・・・」

「でも、そうだとしても、何でお前が不機嫌になる?彼女でもあるまいし。」

ニヤ付きながら、西山啓太はあたしに問い続ける。

「そうですね。そうでした。彼女でもないのに、関知するのは変ですね。
だから・・・あたしから何も言ってません。
ただ・・・ただ、この前は、追い駆けられたのを知ってますから・・・それが意味不明で、気が措けないんです。」

それを言うと、西山啓太は顔を上げて答えた。

「まあな。でもあれは、未だかつてあり得なかった状況。後腐れなくこれまでは来たんだから。」

「後腐れなく?
モテオは、ホント性も無いですね。節操が無いって言うか。」

「お前・・・妬いてんの?」

再び近付き覗かれた。今度こそ至近距離で。

「・・・・・」

あまりに近い顔のせいで、あたしは何も返せずに居た上に、火照りから想えば顔は真っ赤だと悟っていた。
すると・・・柔らかい物が、次の瞬間あたしの唇に触れてた。

そして・・・顔を上げられ、身体が暖かくなってた。包み込まれる様に・・・・・

一瞬・・・意識が薄れ、成すがままで居たあたし。そしてハッと気が付き、力一杯押して暖かいそこから離れた。

「な・何してるんですか?」

「キス」

悪びれずに、目の前の男子が真顔で言う。

「弟子にする事じゃないでしょう?」

「お前が、意識させたんじゃねえか。それに・・・したかったんだろ?」

あたしの頭から蒸気が出るんじゃないかと云う位に熱が上がって、言いたい文句があるのに言えないで、ただジッと見据えた。そして、その変わりに頬に伝わる熱いものと同時に薄らぐ視界。
相手の顔が見えない。
その中で言った言葉。

「あんたには、どうでも良いキスでも・・・あたしには大事だった初めてのキス。
バ・バカ野郎ぉ・・・馬に蹴られて死んじまえ!!」

カウンターに置いたバッグを掴んで、あたしは駆け出し部屋から飛び出てた。もう二度と来れない場所と微かに思いながら。


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