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好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

【新】 LIE 1 キレイな手

2011-02-26 Sat 00:00

1【キレイな手】

牧野つくしは、親の望みで分不相応の学園へ入学し高校生になった。

人生の酸いも甘いも知らない10代。
打算もなければ欲もないに等しい。だから、つくしとしては友達が望む公立校へ進学を考えていた。
しかし、そう思うつくしに親は言う。『学費は確かに高いが、受かればエスカレーター式だから』と。
その学園は、世間に知られる名門校。
初等科から入るよりも、高等科から入るには学力がないと入学はできない。そして、入れば大学へは進学が約束される。

学費を出してくれる親の勧め。それに、一度ですむ受験。ついに入試を受けた。そして、まさかの合格通知。良いか悪いか解らぬまま進学した。

予想を遥かに超えるよろこびようの両親。嬉しいを通り越し唖然と見つめた。

ワクワクする想いの入学当日。
早々と後悔がつくしを襲った。しかも校門前でそれを味わう。

なにしろこれまでの人生ではもちろん、恐らくこの学園を選びさえしなければ目の当たりにすることのない超が付くくらいの高級を超える車。
そこから次々登校して来る学生。それが1台か2台なら気にはしなかった。
渋滞状態の登校模様。

「な・なに?外車ショーでも始まるっての?」

思わずもれた言葉。

つくしも乗り物で登校している。しかし大きな開きがそこにある。
その乗り物は自転車。
乗り物に乗ってはいるが自らの足で校舎を目指す。何と言う違い。

あまりの生活レベルの差にうらやましいと思う気は失せ、唖然とする気持ちになる。
どう逆立ちしても太刀打ちできない。これが身分の差と云うことなんだと15歳で経験した。

そんなこんなを経験して来たつくし。しかし何とかそんな中でも、挫折もせずに2年に昇級した。

これまでのつくしのモットー。



日光の東照宮のサルではないが「見ざる言わざる聞かざる」に徹する事。

金持ちのボンボン嬢ちゃんの意味わかんない金銭感覚のタワゴトにも耳をかさず。みょうちくりんの高級だけが売りのオートクチュールとか云うコートを薄目で流し。「フランスでしか買えない一品物」と豪語していた香水。タマタマ行った雑貨店の量り売りコーナーで同じ香り・名前を見つけても貝のように口を閉ざし言わない。
それを心がけ過ごす。



あと2年。
耐えてみせると誰に言うのじゃなく、自分自身に言い聞かせる。

これまでバイト2つをかけ持ちして来た牧野つくし。それと云うのも、そんな無理な高額教育の場に進学させた親にある。

ギリギリの学費捻出。当然きりつめられる生活費。2つ違いの弟の手前「申し訳ない。」その思いで、少しでも楽になるようにと始めたバイト。

親は自分達が勧めた学園で、子供共々我が身の未来も左右する出会いに「蜘蛛の糸」ならぬ「金持ちの糸」にすがろうとした。
それが、娘を労働の場に強いる結果に繋がった。しかも、入った早々父親は危うくリストラにされそうになり、安く住む事が出来た社宅を追い出されそうになった。

が・・しかし、奇跡が生まれた。

父の勤める会社で起こった一大事が一家を救った。それは、社運を賭けた商品が見事に当たった。そのおかげで、猫の手もかりたい忙しさが生じた。なんと首の皮一枚だった父親をそれが救う結果に繋がる。そればかりか、恩恵に預かりベースアップを受けられた。

「つくし。よろこんでくれ。家に入れるバイト代へらせるぞ。」

そんなもんだ。「しなくて良いぞ。」にはならなかった。それでも、1つだけにへらせたバイト先。

有り難い事に自由な時間が生まれた。

「折角だから、短期間でも良いから高校生のクラブ活動を経験して見ようかな。」

頭に浮かんだそんな考え。今の自分が息づいてる環境を見渡してみる。

「もしもの時、運動部は止め難いし、場合によれば道具を買うようだ。無理無理。」

ブツブツ言いながら歩いていた時、女子学生がケースを持って前から歩いて来た。擦れ違いざまに透明のセロファンを透して見えた中のキレイな和菓子。

「キレイ!」

バイト先の団子屋で見慣れたハズのそれだが不思議に新鮮に思えた。知らず知らずに眼がそれを追っていた。

「アッ!そうだ。茶道部!!」

止めたい時に止められそうなイメージがあるし道具もいらない。しかも、和菓子の名前も知ってる。

そんな単純な考えで決めたクラブ。
女子生徒の後ろをそっと付いて行った。そこは学園に作法の為に造られた和室。
学校とは想えない設えで、茶室も奥に設けられている。それは、入学時の説明会で一度見た事のある部屋だった。

中に入ったのを見送り、どうしたものかと前を何度か往復した。

「君、クラブの子じゃないね。」不意に声を掛けられた。

「エッ・・・は・はい。」声に直立不動になり、その相手の顔も見られずうつむき答えた。

「す・すみません。お入りになるのを邪魔してしまいました。」

「クスッ。邪魔って言えば、言えなくはないけど。」

右隣で聞こえる声。相手の足元だけを捉えて1歩2歩と後退りした。それとは反し相手の足は前進し、戸を開け中に入った。しかし、頭を上げられず下がった位置で停止していたつくしは姿を見ていない。

「体験してみれば?」

相手は中からつくしに男子の低めで甘く優しいトーンの声で誘った。

「エッ!で・・でも・・・良いん・ですか?」モジモジしていると、違う足音が前で止まった。

「サッ!来て。」
「へッ?」

なんと・・・声の主ではない女子学生が誘いに来て、つくしの手を引いて中に誘い入れた。『1~2分位の間に変身した?』

中には、女子10数名・男子10名弱。座る者・用意をする者様々な姿が目に入る。その奥に、凛として正座をしている男子がうっすら伺え気になった。
目を閉じ両手を膝に置いて精神統一?それを見た目でも感じる仕草。みんなその男子に視線を注いでいた。

「あのぉ~?」
「しっ!少し待って。」
「は・はい。」

静寂を維持するように言われ、身を縮めて茶室手前の部屋で立ち尽くす。

「ふぅ~。  落ち着きました。では始めましょう。」
「はい。」
その男子が静寂を解いた。一斉に動き出すメンバー。

「では末席に座って下さい。お茶を頂けます。」
「は・はい。」
誘ってくれた女子がそう言いつくしは答えた。

『さっきの男子は誰?』

明らかに男子だった。
部屋に居る男子を自分の目で伺うが解らない。手前の部屋を抜け奥のこの部屋を前にした時には、数名の女子と殆どの男子が座っていた。

茶道の作法の正座。言われるままに末席に座った。正座をしながら全身に緊張が走る。それは作法など知らないからだ。

「失礼します。」『もうイイや。どうにでもなれ。』

番が来るまで、食い入る様にみんなの仕方をジッと見ればいいと腹を括った。その時、瞑想していた男子の姿が目に入る。『あの人が部長?』

窯がある。横並び越しから見える湯気。
その男子の顔は見えないが、その手に見惚れて凝視する。
男子の手に見惚れるのは生まれて初めて。『キレイ』その手に心で言った。

でもそれが災いした。

作法を見るのを忘れ、隣に番が来た頃にあわてた。
茶器を前に差し出されたが、キョロキョロしまくりで、挙句に持ち方が違っていたらしく、周囲の失笑をかった。なにしろ、つくし以外は習わなくても何らかの経験を積んでる子息達。
恥ずかしさから出された和菓子を食べられなかった。

『あたし以外は、クラブ部員でなくとも作法の一通りは身に付けているハズ。笑うのもわかる。』

つくしが飲み終えた後、全員が一礼してつくし以外が立ちあがった。部員でないのと恥ずかしさから、みんなの最後に立つことにしてそのままでいた。
見ているとクラブ部員は、各自やる仕事があるらしくあたしをそのままに作業に入った。

「初めて?」部長と思ったその人が、去り際に言う。

「はい。家柄が良い皆さんと違って経験がないので。」
「だから興味があったんだろ?」

「はい。」

まさか、入る前に想った動機を口にはできず、そうだと返事した。
まだ恥ずかしさから、立ちあがるその人とは逆に、ひとりうつむいて答えてた。

「どう?入る気になった?」
聞かれたけれど場違いと身にしみて、その答えに首を横に振っていた。
「仕方ないね。相性が何にでもあるから。
でも、これも一期一会。  嫌な経験だったとは想わないで欲しいね。」

「はい。良い経験をさせて頂きました。」

あたしが頭をさげかけているその最中、その男子は部屋から出ていた。
「お先に。」
「エッ?」

頭をあげきった時。その声をたどったけれど、もう後ろ姿しか見えなかった。

LIE
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コメント

★ Re:

ヤッター 総つくがはじまったぁー お約束ありがとうございます。期待してます

2011-02-27 Sun 13:07 URL | puyo #-[ 内容変更]
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