STARLIGHT

好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

【とろける程愛したい】

バレンタインデーがもう直ぐですので、修正版ばかりで申し訳ありませんがご覧頂ければ幸いです。
2011年2月の作品です。


短編【とろける程愛したい】

新たな年が明け、まだ気候的には寒い時期ではあるが節分を迎える頃になった。

テレビでは、暦の上で春になったとニュースでキャスターがコメントしていた。しかし、それはあくまでも暦の上でだ。


何しろ世間を見渡しても紙面上でも、どれ一つとっても、まだまだ冬を引きずっている。

テレビのチャンネルを廻しても南に位置する沖縄以外では、日本の至る所で冬景色を映し出してる。しかも、その南国沖縄であっても、今年は温かさが本来とはいかないと報道していた。

しかし、それでも確実に春は目の前。街に出るとデパートのショーウインドウでは、早く心躍る季節が来いと言わんばかりに春の装いが彩られている。

そんな中で、本物の春に到達する前に通らなければならない一日がある。男性には少し気の重い時期。それは、バレンタインデーだ。

一年の内で一番チョコレートが消費される時期。まさにチョコレートのお祭り。

これは間違いなく企業戦略だと叫びたい。何しろ、その年間消費がピークになると何かの番組でキャスターが話していたが、まさしくそれは戦略の手中にハマった物だと絶対思う。

数年前は義理チョコが当たり前に買われていた。でも今は、企業によってはその日の社内配布の禁止をうたう場所もチラホラある。すると早速、その狙いどころを変えた。
「自分へのご褒美」それを全面に出し始めた。

しかも、義理チョコとは真っ向から違うのは価格。ご褒美というくらいだから普段では手に出来ない高級感あるチョコレートが目白押し。複数買わないといけなかったのとは大きく様変わりして、自分に対しての最高の1つを選ぶ。価格は当然違ってくる。

それを目論み【世界の一流ショコラティエ】と銘打って、本来ならその国に行かないと口に出来ない極上の一品もお目見えする。一流の職人の味を堪能できるチャンスが売りになる。
そして、ひと箱にいく粒しかないと言うのに3000・5000円。更には1万円の高級品もお目見えした。中には1粒2000円と云うのもある。

そんな世間を知ってか知らずか、俺の恋人は物の価格にとてもシビアだ。
ある日の買い物に付き合った時の事だった。
「これ1切れが140円?
え~おじさん!駅前の店は100円でもう一回り大きかったよ。でも・・・あたしはおじさんのこの店が好き。
これからもここで買うから2切れ250円にしてよ。」
良く行く店先で彼女が言った台詞だ。すると店の大将は言う。
「いつもながら参ったな。でも・・はいよ。250円で良いよ。」
「ありがとう!!」
それで交渉成立。

その姿は、あと僅かで大企業の後継ぎの伴侶になるとは到底思えない。それでも、側に居て笑顔にならずには居られない。その姿全てをひっくるめて愛しているのだから。

「ねえねえ。花沢類。」
「ん?」
いつもこんな会話で始まる。

今、2人で居る場所は俺のマンション。この所、仕事が忙しくて帰宅したのは明け方だった。そんな中での彼女の訪問。

「なに?もう少し寝させてよ。」
俺は恋人の膝枕でうたた寝をしていた。
「そんなに眠いなら電話で言えば良いのに。」
耳元で甘くない口調で俺に声を掛ける。

「言ってくれたら来なかったのに!ねえ・・・眠いならベッドで寝なよ。風邪引くよ!今日はあたし帰るから。」
最後には心配そうな声で言っている。でも俺は帰したくない。かと言って起きたいけれど眠さが先に立ち、どうにも眼を開けられないのも現状だった。
ただ、そんな中でも自分の寝ている側に彼女がいるだけで幸せを感じてもいた。

すると、突然思い付いた様な弾けた声を閉じた瞼の向こうで聞いた。
「そうだ!
寝ている間に何か食事作るね。」

そう言うと優しく俺を膝から降ろしキッチンに歩き出した。
彼女は料理が好きだし得意。用意してくれるどれを食べてもみんな美味い。でも、彼女に香りに包まれてもう少し俺は膝で眠りたい気がしてた。

そして、瞼を閉じていても意識は姿を追っている。俺はカワイイ声を捉えていた。楽しそうな彼女の歌声がBGMだ。眼を閉じながらも思わず両方の口角が上がる。本当はスグにでもそこへ行って後ろから抱きしめたいが、ハードな日が続きクタクタな身体がそれを許さない。

いつしか歌声を子守唄にして浅い眠りに着いていた。そして「ハッ!」と見覚めて静かさに戸惑った。
「牧野?」

眼を開けると部屋の暗さから帰ったことを知る。自然に身体がうな垂れて、俺は独り「ごめん」そう呟いた。
腕時計に目をやると時刻は夜の8時。彼女が居た時刻から8時間は過ぎていた。
昼飯はどうしたんだろう?いつまで居たんだろう?と気になりつつ、俺はノドの乾きを潤す為にキッチンに歩いて行った。
「アッ!」
そこには俺の食事の用意があった。シンクに行くと洗って伏せてある食器が眼に着いた。
「あいつ・・・ひとりで食べて帰ったのか。牧野・・・ごめんな。」
彼女が使ったマグカップにそっと触れてみた。その食器の冷たさが指から心に伝わっていく。

食事の用意の隣にメモが添えられていた。
  
  花沢類へ
   お仕事ご苦労様。
   ゆっくり寝たかな。
   あたしは、側にいられて幸せだったよ。
   ご飯ちゃんと食べてね。
   大好きだよ。
             つくし

いたわりに溢れたメモ。
幸せだと心から思う。こんな振る舞いをされてはマスマス愛おしさは増すばかり。次はどんな風に俺の想いを伝えようかとテンションが高くなる。

「ねえ花沢類。明日は会える?」
それから数日後の事。携帯で珍しく彼女のはしゃぐ声を聞いた。
「会えるけど・・・時間が・・・」会える時間をいつと即答したかった。でも、企画が持ち上がりそれを許さない状況がまだ続いてる。
「じゃあ・・・部屋に行っていても良い?」
帰る時間がわからないがそれでも良いかと尋ねる俺。すると即答で「良いよ」と言う。それを言わせる理由はわかってる。バレンタインデーだ。
「良いよ。冷蔵庫に果物があるから食べるとイイよ。アイスクリームもあるから。」
わかったと嬉しそうな声が返って来る。聞く俺の方が嬉しい。

彼女が行くと知り、俺は遠隔操作で部屋の床暖を入れた。でも暖房は入れるだろうが、きっと勿体ないと自分から入れない俺の恋人。だから尚更気配ってやりたくなる。

今日はバレンタインデー。

社内では恐らく昼休みが最初の手渡しタイム。いわゆる義理チョコタイムだ。
そして、本命へのプレゼントタイムは帰り間際までオクビにも出さない女子社員達。終業時間と一緒に動き出す目論みに違いない。中にはこっそり早朝に出社して、相手のデスクに置くタイプもいる。様々な方法でチャンスを掴もうと画策する。
この日ばかりは受け身の男達は疑心暗鬼。自分ははたして1つでも手に出来るのだろうかと。まして好きなあの子から得られるのかと気が気ではないに違いない。

山の様に贈られる中で、俺もかつてはそうだった。好きな相手は、親友にだけ贈るのだろうなと垂れていた。
でも、そうじゃなかった。
フレンドシップだからと言いながら俺にもくれたチョコレート。
甘い物は苦手でも、事と場合が違えば、そうは言っていられない。是が非でも欲しくなる。できるならラブと添えられていれば心底嬉しい。

それが今では、愛あるチョコレートとして贈られる関係になったとは、夢のようだと思う自分が存在してる。
見守る愛。
かつては、それで良いと諦めていた。だから、今がどれくらい幸せかは言葉に出来ない。

仕事を放棄して帰りたい思いがあるが、そうも出来ない大人の世界。しかも背負う側の人間の立場なら尚のことだ。
ここの所はデートもお預け。休日返上の日々。疲労はピークに近い。彼女には話していないが、15日はこれまでを理由に休暇をもらってある。バレンタインデーの翌日の休みと云う訳だ。みんなに何していたかと、きっと16日は冷やかされるだろうが、既に婚約中の身ならば問題はない。

あいつは勿論出勤だろうが、何とかすれば良い。悪知恵が疼く。

とは言え、そんなワクワクする気持ちに反し、待ち人が居ても早いご帰還とは行かなかった。時計を気にしながら11時を過ぎたのを確かめた時、思わず洩れた溜息。

「帰ったかな?」

携帯を鳴らしたが出ない。「やっぱりそうだよな」独り言。
そして、ようやく部屋の前に到着。
ドアを開けて「エッ?」思わず声が出た。そして慌てて駆け出す足。
「牧野!!」
小さく丸まる様に床に眠っていた。チョコらしき箱が延ばした手の先の床に置かれている。

「牧野・・・起きて・・牧野」
「ん~・・・うん・・うっ・・エッ・・あっ・・・」

カワイイ寝顔。思わず俺は頬にキスをした。小さな動物の様な可愛さも加わり頭を撫でていた。でも、次の瞬間彼女が突然パッと眼を開けて半身を起こした。そして瞬きをくり返し慌てている。

「アッ!!」

寝起きの中で、自分の手元ではなく床に置かれている大事な物を発見すると、俺に眼もくれずそれを引き寄せた。

床の温度を確かめるように手をフローリングに当てた後、箱を横に揺らした彼女。

「エッ!ウソッ」

そう発した後、首をもたげて全身でショックを現してた。
14日で贈り物の箱となれば、言わずもながの品物になる。
大事なチョコレートが原因だろう。揺らすことで確かめているのなら、それは恐らく溶け具合を見ているのだろうとわからないなりに察知した。

そんな事はオクビにも出さずに話しかける。
「牧野。ただいま。お待ちどうさま。今日中には間に合ったよ。」

すると、チラッと俺を見た後、眼を伏し目がちにして小声で「おかえり」とひと言だけ言った。その時、瞳が潤んでいる気がした。
彼女の事だから、手間暇かけて作ってくれたに違いない。
「牧野」
俺は名を呼び頭を抱え込むように抱きしめた。
確かめてはいないが言ってやりたかった。形はどんなでも良いんだと。お前が俺にくれる物なら一粒でも液状でもかまやしないと。でも、それを言ったらせっかく作った思いが損なわれそうで、話されてもいない中では言えなかった。

「あのね・・・花沢類・・・アッでも・・・どうしよう。」
胸元で迷ってる。それを耳にして俺は言ってみた。
「これ・・・俺にだろ?」
すると小さく頷いた。
「もらって良いね?」

「でも・・」
牧野が不安そうな声の中、手からそっと取り上げた箱。
「中が・・・」ひと言。

「もう俺の物。だから気にしなくて良い。あんたが俺にくれる物は全て愛だから。」
「花沢類」

俺は、ある提案を耳元で囁いた。
「エッ!やだよ」
顔を真っ赤にして答えた。
「だったら、中を見て決めよう。でも、もしそうならするよ。いいね!!」

これが二人の会話。

そして俺は牧野をお姫さま抱っこでバスルームに消えた。

「変だよ。そんなの。
もう・・・花沢類ってば・・・」
抱かれながら騒ぐ恋人はますます顔を真っ赤に染めていた。


翌朝。
昨夜の名残りのチョコレートを身体の所々に残したまま。俺の隣で眠ってる可愛い人。

「さて・・・残りを食べ尽くそうかな。」
顔を覗いて呟いた。

花沢私邸のメイド責任者松尾に早々に頼み事をした。
良き理解者である松尾に牧野の会社へ母親のふりをして連絡を入れてもらった。

だから、予定通りに起こさずゆっくりできる。

でも、起きればきっと言うだろう。
「大事なチョコをとろけさせた床暖なんてキライだと」

それを言われたら俺も言う。
「形は牧野の写メで確かめられた。
美味しい思いが出来た床暖は優れ物だ。俺の望みを一番知ってる!」と。

後になって万が一、どんなバレンタインデーチョコを贈られたか?と親友に尋ねられても、柔らかくなりすぎた生チョコを彼女の身体に塗って食べたとは到底言えない。

でも・・・これだけは言える。

「すこぶる美味かった」と。

・・・・・・・Fin・・・・・・・
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