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好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

問わず語り 3話 親友

3話【親友】

一度好きに成ったら心は簡単に揺るがない。

何故なら、そこに行くまでには人一倍時間を要するから。

一目惚れ。俺にとっては有り得ない。どんなに見た目が綺麗でも、心が動かなければ想いは動かない。

生まれた時から褒め尽くされて、思惑を抱えた者と接して来たお陰で、打算があるか無いかは見通せる。

それが良いか悪いかは正直解らないし、解りたくもない。ただ言えるのは、自分の心に正直でいたいだけ。


牧野つくし。

誰より正直で真っ直ぐな女子。
誰であろうと必要が有れば蹴りを入れる。大切な者を守る為なら自分を犠牲にして。
媚びる事無く有りの侭を受け入れる。

俺は、そこしか目が行かなくなっていた。
NYから戻り想いはより一層深く。

「あんたと居ると飽きる事がない。」

それは、俺にとって正真正銘、心を許した証の言葉。事実、どこに居るより牧野の隣が居心地が良い。
例え吹く風が冷たくても、隣に居られれば心が温かく寒さは感じない。

今迄どんな国に行っても、店先を通り過ぎるだけだった俺。
今は違う。
ショーウィンドウ越しに可愛い物が有れば、ふと立ち止まり見入ってしまう。

「牧野が喜ぶかな?」
そんな想いで。

だけど、そんな自分を嫌いじゃない。寧ろ、それまでよりも数段好きになっている。

「あんたの側にいつもいるから。」

牧野に言った。
紛れもなく好きだと心が認めた証。
「守りたい。」それは男の本能。

人間が創世した頃からの自然な愛の成せる行為。

『愛されるより愛したい。それは綺麗事。真実人を愛したら、求める先は誰もが向けられる愛を求める。』
そう想っていた。
でも、考えは変わった。

想いが深ければ見守る愛もあるのだと。
愛する人の笑顔を守れるなら、向けられる想いが同じでなくても耐えられるものだと。

あの日まではそう想っていた。
だから
「あんたの側にいつもいるから。」で留めていた想い。

「俺があんたを幸せにする。」
俺の決心。
誰にも渡さず、抱き締めると決めた証の言葉。

初恋の時とは違う激しい感情。
愛し愛されたい。
力の限り抱きしめて、乱れる程に愛したい。
誰にも触れさせる事無く守り続けたい。見つめる先はいつも自分であって欲しい。

俺はもう遠慮はしない。牧野から笑顔を奪う者を許さない。

今夜、牧野には伝えずに道明寺司・俺の親友に会う。

それは、俺から切り出そうとしていた事だった。
帰国すると聞いたその場で想いを決めた。
しかし、切り出したのは司から。言うまでもなく、話しは牧野つくしの事だった。

司は2日前帰国した。
忙しいらしく分刻みで動いていると美作あきらから聞かされた。
その忙しい司が、時間を割いてでも俺に牧野との事で会いたいと言う。

「諦めろ。牧野は俺の女だ。」

司は俺に言いに来るつもりだろう。しかし俺は怯まない。もう決めたのだから。何があっても諦めない。

いよいよ、その時は来た。
時間は早まり、夜と言っていたのを2時間早くしないかと連絡が入った。

会う場所はいつもと変わらず、メイプルホテルのスウィートルーム。
但しこの日はラグジェアリー・スウィートルームにレベルを上げて。

男2人で何故?
そうも想ったが、何の質問も投げ掛けず向かった。

行き成れた筈の親友の親が経営するホテルの1室。
しかし、今日は違う。重い足取りでそこに向かう。
最上階に位置したその部屋のブザーを押した。

一呼吸置いた頃、険しい顔の司がドアの向こうから顔を出した。

「類、待ってたぜ。入れよ。」
「ああ。」

俺も一呼吸入れながら踏み入れる。今迄感じた事のない程の重圧感の中へ。

広い筈のリビングスペース。なのに、広くは想えず息さえし辛い程に狭く想えた。

「類、こっちに来ないか?」

開かない大きなフィックスガラスの窓近く司は立って、驚くほどに穏やかな声で俺を呼んだ。
ドアを開けた時の険しさは微塵もなく。

「うん。」
言われるままに素直に司の元に歩み寄る。

「寂しいな!」

「エッ?」

「夕暮れの事だよ。見ろよ、この時間が一番人を惑わすらしいぜ。」

「どうして?」

「家路を急ぐ者。向かえる人の無い家には帰りたく無くて、夜をどう過ごそうか思案する者。
温かい飯を作って待つ者がいる奴に取っては、混み出す時間を一刻も早く帰りたいと焦る時間。
温かい飯どころか、明かりもない家に帰るのが寂しいと、人恋しさで寄り道を考える者。
そんな迷いの時間らしい。

見てみろ!
それにこの中途半端な明るさの時間。
ヘッドライトを点ける車も有れば点けないままの車もある。

歩く人間が、危ない時間でも有る訳だ。」

「どうしたの?こんな高層からじゃ良く見えやしないのに。」

「そうだな。
でもな、俺自身、見なくてもこの身で感じていた事だから、今更間近で見なくても充分過ぎる程解るんだ。」

「司!」

「だから、決めてた。
俺は好きになる奴を寂しい想いにはさせないって。
絶対に側に居てやるってな。
休みの日の夕暮れ時は、特に一緒に居てやるんだって。」

「何が言いたい?」

心なしか震えてる気がした司の声。

「類!牧野の事・・・諦めようと思う。」

「エッ!!今何て言った?」

俺は耳を疑った。
殴られる覚悟で来た筈が、しずかにその親友と話をしている。それどころか、弱い部分を曝け出して。

「NYに牧野が来て、会えない状況で帰国させた俺。お袋が仕組んだ策略だった。
それに気が付いて、焦って空港に追い掛けたよ。
でも、そこで俺が見たのは牧野を支えるお前・花沢類の姿。」

「だったら、引き止めれば良かった!
側に来て、力づくで抱き締めれば良かっただろう?」

怒りが込み上げ、殴られる覚悟が逆に殴っていた俺。
司は床に倒れて行った。それと同時に俺も態勢を崩し司の上にのしかかる形になった。
気が付けば俺の頬に涙が流れ、司の切なさを受け止めていた。

「聞いてねえか?」不意に言う。

「何を?」そう答えた。

「その言い方じゃあ、聞いて無いんだな。そう言う奴だよな。」
溜息ひとつ落とし、司が言った。

「エッ?それってもしかしたら、牧野?」
何があったのだろうと焦る俺。

「ああ。」

俺は真上から司を見据えた。けれど、微動だにしない姿で司は先を続ける。

「あいつに・牧野に連絡を入れたんだ。」

俺は何も言わずに聞き入った。

「牧野に言われたよ。NYは賭けだったと。
そして、それと同時に気付いたって。何が自分には必要かを。それを失いたくないんだって。」

さっきと同じ、微かに声が震えてる。だけど話しを止めようとはしないで。

「俺は、それ以上は聞きたく無くて、解ったからそれ以上は言わなくて良いと牧野に言った。」

それだけ言うと司は俺に視線を合わせ、潤んだ瞳を逸らす事無く見つめて言った。

「類。俺があいつと居られない分、ずっと側に居てやってくれ。」

「司は?お前は良いのか?夕暮れの人を惑わす時間をひとりで過ごせるのか?」

「ああ。俺なら平気だ!慣れ過ぎてる。」

「だったら、俺も慣れてるよ。お前よりも数倍な!」

「そうだよ。
だから・・・そんな類だから、牧野を託せるんだ。
俺には少なくとも姉貴がいた。
あったかいとは言えないが、温もりは充分味わえた。
だから、お前に味合わせてやる。極上の温もりを。」

床に無防備に横たわる司は、上から見下ろす俺を真っ直ぐに素直な瞳で見つめ続けた。
そしてその頬を同じ様に涙で濡らしながら。

どれ位時間が過ぎただろうか?
2人床に並んで寝転び、ひと言も語らず涙にくれた。
やがて、司がポツリ言う。

「あきらと総二郎に泣いた事、言うなよ!」

「ああ。俺の事もね!」

「ああ。死んだら言わねえ。」

「そしたら言えないよ。死んでも言わないだよ!」

「バ~カ!!同じだろうが。」

「クスッ!」

「おもしれぇな類は!ハハハハハッ・・・・・」

「それは、司だよ!!ハハハハハッ・・・・・」

「頼むな!牧野の事。」

「司!本当に良いの?後悔しない?」

「しない訳ねえだろうが!!・・・でも、これで良いんだ。」

「遠慮しないよ。」

「そのつもりで来たんだろ?」

「ああ。」

「1発殴らせろ!」

「エッ?」

その行動の素早さに驚きのまま、俺は司に殴られていた。
俺は口の中に錆の味がした事で、司と同じ赤い血が出た事を知る。
それでも、2人で互いに手の甲で拭きながら笑いあった。

「良い女だから、大事にしろ。」

「知ってるよ。絶対に手放さないから安心して良いよ。」

「何だか、複雑だ!!」

この夜、未青年にも拘らず俺達は、深夜まで床に座り込み、部屋のありったけのアルコールを飲んだ。

やがて開け放した窓から煌びやかに星が瞬いているのを

俺も司も何も言わずに見つめて・・・・・・


・・・一話完結 

1話花沢類
2話チューリップ
3話親友
4話つくし  

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