STARLIGHT

好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

鎮魂歌 第3章 命

3【命】

エントランスを出ると総二郎が待機していた。

「類!ここだ」

周囲は異様な光景に居合わせた人がザワついた。
ようやく遠くに救急車とパトカーのサイレンが微かに聴こえる。それを無視するかのように後部座席に類はつくしを抱き抱え乗り込んだ。

「行ってくれ!」
「ああ。」


総二郎は捕まるのを覚悟で、最初からスピードを上げ走り出す。
運の良さからか心配だけで済んだお陰で目的の「木野総合病院」に到着する。
そこには、あきらと滋が医師・看護師と共にストレッチャーを用意し待ち構えていた。

「さあ!こちらに。」
医師の声に
「はい」

つくしを乗せると、状況を直ぐに判断し移動させながら看護師に指示をしている。
「まずレントゲンだ!連絡は済んでいるから、このままに行こう!」
「はい」

そのやり取りに息を飲む。
到着するや否や、酸素マスクを宛がわれるつくしを見ると、類は安堵と共に不安も過る。

『助かるだろうか?』

検査を済ませ、直ちにオペ室と言うその僅かな合間に青白い顔を見つめ、冷たい手を握りながら、類は祈ったり信じたりした事など無い天に向かい祈り・すがりたい心境だった。

つくしの体を受け入れたオペ室が点灯し、救命が施されている状況を示している。

「牧野・・・・・」

そのドアの前で立ち尽くす類に、あきらと総二郎・滋が側に寄り添った。
「大丈夫。
牧野はそんなに運の悪い奴じゃない!」
あきらが類を励ます。

類のシルクのスーツが真紅に染まっているのを滋が見つめ嗚咽している。

「なぜ・・・・・なぜ、こんな事に・・・・・」

今頃、先に連れ出された道明寺楓はどうなっただろうか?
それぞれが想いを馳せた。

病院では携帯は使用出来ない。
知る手段は公衆電話。しかし、今それどころでは無い。

牧野つくしの生死が眼の前のドアを挟んだ向こうで戦われているんだ。

時間が刻々と過ぎて行く。
既に2時間を回った。その最中、看護師が1度ドアの向こうから出て来た。

「どうですか?」

咄嗟に類が聞いたが何も答えず何処かに行った。
数分後、何かを手にして再びドアの向こうへ消えた。

その時、ホテルに残っていた優紀や桜子が姿を見せた。

「どうですか?」
「まだ何も解らない。」
「つくしの両親は?」
「今、こちらに向かっています。」
「そう。」
「それから、道明寺さんのお母さんは命に別状は無いそうです。
転倒で一時的に気を失っただけだと、警察の方が教えてくれました。」

無言で固唾を飲んでいる類が拳を膝で叩きながら
「先に牧野を運んでと言ったのに!」
ポツリ口にした。
全員が怒りで満ちている花沢類を初めて眼にした。

それから、1時間後にようやくオペ室の点灯が消されドアが開かれた。

酸素の管を鼻に付けられ、点滴を施されたつくしを目の当たりにし、再び全員が胸を締め付けられた。

オペ着を赤く染めた医師が、つくしの後に続き姿を見せると類を呼び止めた。

「類君、彼女のご両親は?」
「今向かっています。もう来ると思うんですが!」
「そうか・・・・・仕方ない。
ここへ運んでくれたのは君で、親しい関係と言う事だろう?
ご両親が見えるまでは君が責任者と言う訳だね!」

「はい。」

そう答えた類に口調も表情も重くして加藤医師が話し出す。

「彼女は極めて危険な状態だ。まず、先にそれを話しておく。」

類は、一瞬足元がグラつき息が苦しくなった。

「しっかりして!」
「は・はい」
「助からないとは言っていない。
しかし・・・厳しい。
それと、助かっても後遺症は避けられない。」
「後遺症?」
「ああ。恐らく両足では歩く事は無理になるだろう。」
「エッ・・・歩けない?」

「そう。刺された側の脚を動かす事は難しいと想う。意識が回復したら様子次第では、その足を・・・」
「その先は・・・言わないでください。100%ダメではないんでしょう?」
「それは・・・・・」

「100%ダメでないなら、俺が・・・俺が歩かせます。必ず!」
「解った。しかしその前に、ここ一両日を乗り越えよう!
良いね。」
「はい」

ICUのガラス越しから意識の無いつくしをみんなは、泣き腫らす眼で見つめている。

類はガウンを来て側についた。冷たい手を握り、赤くならない頬に手を触れる。

『眼を開けて!花沢類と可愛い声で呼んでくれよ!』心で叫ぶ。

『俺はまだ伝えていない!牧野つくしを・・・愛していると!』

ガラスの向こうで、類がつくしに寄り添う姿を見て、その場の全ての者が気づいた。
花沢類の牧野つくしへの深い愛。

その光景を見つめているその時。後方から急ぎ足で近付く音が聴こえて来た。
その足音が止まり、隣に彫の深い顔が中を睨む様に見据えた。

「つかさ?」
総二郎が驚き声を上げる。

「牧野はどうなんだ?・・・・・総二郎?あきら?」
「今夜が山らしい。」
「なんで?なんでだ?
それにあそこでどうして類が牧野の手を握ってるんだ!」

「それは・・・・・」
「あいつは・・・牧野は俺の女だって伝えとけ!
ムナクソ悪いから出直す!」

「司!
そう言うなら、ここに居ろ!危篤だって言ったろうが・・・」

「総二郎!
てめえが俺に指図すんな・・・・・出直すって言っただろうが!」

威嚇しながら、去勢を張りその場を去った司。
自分がしてやりたかった事を類にされたイラつきと、命の危険があると知り見ていられない衝動が司を素直にはさせなかった。

本当は、類の様に近くで手を握りたかった。
先を越された事で、プライドを傷つけられた司が唯一取れた態度が・・・・・それだった。

司の痛みが伝わる分、親友としてそれ以上責められず後姿を見送るあきら。
司に未だ想いを寄せる滋がその後を追いかけて行った。

これから、長い夜が始まる。




鎮魂歌


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