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好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

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ロード 28歩 希

2010-10-09 Sat 00:00

【28歩 希 】

つくしは複雑な想いで家路を辿っている。
あれから役所に寄り出生届を提出し、晴れて我が子は【牧野希】として、この世に認められた。
母だけの戸籍の我が子に、どんな将来が待つのか解らないが、胸を張り凛として生きる強い子になって貰える様に、まずは自分が臆することの無い人になろうと心に言い聞かせながらその道を歩いていた。

その時ふと思い浮かんだ。
あの年配のお手伝いさんの言葉を信じれば、花沢類の母は牧野つくし・その子を思いやり、類の病状が安定しない以上、【花沢】と言う家柄に囚われて暮らす事を強いられないように配慮し、冷たい態度で接したと言う事。
確かに納得は行く。
なぜなら、類は【一人っ子】で、万が一のことがあれば、後にも先にも継ぐべき人はいなくなる。そうなった時、その子息の忘れ形見の子供の存在が重要になるだろう。
財産はあるが、自由の無い暮らし。地位や資産が無くとも自由に暮らし、好きな選択肢の中で羽を広げられる暮らし。
どちらが幸せかなんて解りはしない。だから尚更、自分の意志で気持ちを選択できるようにと願っての親心に他ならない。それが、病室でのそっけない態度に繋がる。
そこで気付いた。
「だから、不快には想えなかったんだ。本気の冷たさじゃないから!」
かつて、恋人のセレブの母を眼の前にしたあの日、受けた感情を想い起した。
「違う・・・・・まるきり・・・・・突き放す冷たさを少しも感じなかったよ!・・・・・類・・・類!!」
三日月の浮かぶ夜空を見上げ、声を挙げて呼び掛けた。


そしてあの日から2日後の約束の日。
その日は、希の退院の日でもある。一緒に来たいと言う両親を説得し、1人で迎えに行ったつくし。
その日の為に買い揃えた真っ白いベビードレスを着て、つくしの腕に抱かれ安らかな寝息を立てている希。
専用入り口に名前を告げ、エレベーターに乗り上がって行く。
「落ちつけつくし。類は無事。絶対眼を覚ます。」
そう言い聞かせて!

あの翌日、美作あきらから連絡があった。
『牧野、昨日行ったんだってな?言えば一緒に行ってやったのに!大丈夫だったか?』
『うん。大丈夫。気に掛けてくれてありがと。』
『ああ。それから、これは他から聞いた話だが、類は本人自体が心を閉ざしてる可能性もあるって聞いたんだ。これはあくまでも、憶測ってやつで本当かは定かじゃない。でも、子供の頃心を閉ざし掛けた類なら、満更違うとも言いきれないところもあるし。』
『それって・・・類自信が目覚めようとしない限り、眼を醒まさないのかな?』
『オイオイ牧野!声が変だけど?大丈夫か?』
『アッ・・・・・・ご・ごめん・・なさい・・・。大丈夫。』
『大丈夫さ!牧野がマメに通えば、そのうち起きるさ。』
『う・うん・・・・・・』
『じゃあな!そのうち遊びに行くからな。』
『待ってる・・・・・じゃあ・・・・・』
切った後で呟いた。
『あと一度行けば、もう行けなくなるかも知れないんだ!美作さん・・・・・』

そして、その最後になるかも知れない日が訪れた。
「コンコン」
「どうぞ。」
眼の前には、初めて会う花沢類の父が風格ある佇まいで、立ってつくしを待っていてくれた。
「初めまして、牧野つくしです。そして、この子は・・・・・・
私の子供の、牧野希です。今日退院して来ました。この子まで、お邪魔をしまして申し訳ございません。」
「良く来て下さいました。私は類の父の、花沢瑠譜都と申します。先日は隣の妻しかお逢い出来ず、残念に思っておりました。お目にかかれて嬉しいです。」
「勿体無いお言葉、痛み入ります。
先輩には、色々相談に乗って頂いて感謝しています。この春、研修医になれたのも先輩が助言下さったからです。
その先輩が、事故に遭われ意識がないと伺い、心から心配しておりました。こうして、会わせて頂いて感謝しています。
私の子を一目お見せしたくて、不仕付けとは想いつつ、連れて参りました。」
「ほう!私にも会わせて頂けますかな?」
「はい。是非!」
大切そうに類の父へ渡したつくし。
堪えても、抑えが利かず、ひとすじ頬を雫が伝う。顎まで触れずにそっと甲で受け止めた。
気が付けば、受け止めたその威厳ある人の頬にさえ光が煌めいている。
笑顔で見つめる類の父と母。2人の瞳は、つくし以上に濡れていた。
後ろで声を殺しながらも、その様子を支えるもう1人の付き人が、つくしの背中を支えながらベットに促して行く。
「類様、牧野つくし様でございます。漸くお越しになり、お近くに見えましたよ!」
そっとつくしの手を取り、類の手に載せてくれた。その身をさっと後ろに引くと眼頭を抑えている。
類の父母は、見ない振りで希をあやしてくれていた。
「類!遅くなってごめんね。会いたかったよ。あたし・・・合格したんだ!今研修医。産休中だけどね!
みんな良くしてくれる。だから、あたし何とか大丈夫・・・・・・・」
その時、微かに指が動いた。

時々は動いているのだとは先日も聞いてはいた。でも、つくしの話しに反応する様に動いた気がして?
「類は、起きないの?
起きないと、あたしお嫁に行っちゃうよ?良いの?可愛い子供と2人で!
会えなくなるんだよ?類?」
すると再び指が動いた。
後ろで、大人しく抱かれていた希が、お腹が空いたのか?オムツが濡れたのか?急に泣き出した。
「つくしさん!類に会わせてあげて下さい!」
「はい。」
泣いてる希を受け取り、類の隣に寝かせた。
すると・・・・・・
「あなた・・・・・希ちゃんが泣き止んだ!」
「ああ。・・・・・ああ!」
ミルクの甘い匂いを漂わせ、類の傍らで手足を動かしている。
「類・・・・・泣き止んだよ!不思議でしょ?生きてると、不思議はいっぱい起きるし、奇跡もいっぱい起きるんだよ!だから眼を開けて!
るい!・・・・・・もう来てあげないからね!!」
止めど無く流れる涙は、もうどうしようもなかった。ふと見れば、つくし以外の3人もそれ以上に嗚咽している。
もう既に家族なのだ!

「類。つくしさんが、お前の子供を宿し、産んでくれた。起きないと、何処かの奴に持って行かれるぞ!」
信じ難い光景がそこにはあった。
決して口に出して貰えそうにない言葉を叫ぶ類の父の姿。
「類。孫が出来たの。類にそっくりな可愛い女の子!」
類の母も、口にしてくれている。
嬉しさが込み上げて止まらない。

つくしは希を抱き上げ、2人に向きを移した。
「類のお父様・お母様。何て言って良いやら。嬉しくて堪りません。これで、何があっても生きて行けます。心からお礼を言わせて下さい。」
希を抱きしめたままつくしは精一杯頭を下げた。
「また来てくれますか?」
「はい。許して頂けるのなら。」
「勿論です。」
「ありがとうございます。また伺います。」
そこではそう言いながら・・・・・
類の元に近付き
「バイバイ!類。この類の子と、お嫁に行きます。そうだね?誰にしよう?祥一郎さん?司?総二郎?選り取り見取りだ!
でも、恨まないでよね!類が起きないんだから。」
言い終わった時だった。希が再び泣きだした。まるでイヤだと言うように・・・・・・
つくしは泣く希に母乳をあげる為に、ベットから離れたその時だった。

「つくしさん!・・・・・・・るいが・・・・・・」
「エッ!」
振り返ると、瞼を開けて微かな声で
「つくし!」
そう呟く類が・・・・・・いた。

白雪姫が王子様の訪れるのを待ち侘びていたかのように・・・・・・

つくしの呼び掛けに反応したように想えた類の動き。
そして我が子・希が、父である類と心を通わせるかのような以心伝心した泣き方。
つくしは奇跡を信じた。

美作あきらがつくしに話した電話の内容から、自ら心を閉ざして目覚めようとしていないのではないか?とさり気無く口にした。つくしはそれが頭の隅に引っ掛かり、この日わざと【つれない言葉】で類に話し掛けた。それは想う気持の全く逆の言葉で!
『お嫁に行っちゃうよ!誰にしようかな?』
有り得ない内容だと心で叫びながら。もしも万が一、類が眼を開ける事が時には『希と2人で生涯生きていこう!』それが本音。つくしは必死で訴えた。

「つ く し 」
と・・・・・・類が言葉を発した。考える事無く身体が反応し、つくしは希を抱きしめ掛け寄った。

あの日から順調に類は回復に向かっている。
僅かしかいられない中でも、毎日のように病室に通う生活がスタートした。
つくしが留守の間、希は母・千恵子に託して!
友人達に連絡せずに付き添っていたつくしを、たまたま見舞いに来た彼らを驚かせたのは言うまでもない。
そして何より眼を見張った事は、類の回復力に他ならない。
事故直後、危篤だった時期を越え、意識を回復させても良い状態になってからも、長い期間目覚めることが無かった御曹司。
それが見舞いに来ていなかった僅かな期間に、ベットから離れ車椅子に乗り会話をしているのだ!驚かない方が不思議だろう。
「類!・・・・・牧野?・・・どう言う事だ?」
眼の前のあきらと総二郎が唖然としていた。
「色々済まなかった。あきら・総二郎。」
「「るい!!」」
2人は駆け寄り類を抱きしめた。男泣きとは綺麗だと、つくしは3人を目の当たりにして胸が熱かった。
「牧野!お前のお陰なんだろ?お前が来たからだろ?」
あきらがつくしを抱き締める。
「ううん。美作さんのお陰だよ!あの電話がきっとあったからだよ。」
2人が抱き合い、訳の解らない事で感動するのが気になる類と総二郎。
「あきら、いい加減に離れてくれるかな?」
「ホントだよ!それに何だよ、あきらのお陰って?」
2人は離れながら、つくしが言おうとするのをあきらが手で制し。
「牧野、俺が言うよ。」
「うん。」
「類の意識が戻らないのは、本人が起きようとしないからかも知れないって、俺が言ったんだ。」
幾つかの部分を省き説明すると
「だからって、牧野が来た途端に何で意識が戻るんだ?」
「奇跡さ!愛の・・・・・なっ!牧野。」
「うん。」
すると・・・
「あの時・・・・・・」
類が、ポツリポツリ話しだす。
「ん?あの時なんだ?」
総二郎が聞き返した。
「つくしが夢の中に現れて、俺に言うんだ!」
「なんて?」
「みんな良い人だから、あたしは大丈夫。起きないなら、希とお嫁に行くって。誰にしようかってことまで言って、遠ざかろうとしたんだ。そしたら・・・・・・開かなかった瞼が開いて、名前も口にできた。
不思議だけど、これが事実。」
「それで、誰のところに行くって言ってた?」
総二郎が食いつくように類に尋ねると、類は睨み
「覚えていても言わない!それに、もう起きてるから!!」
「あれっ?・・・怒ってる?」
「怒ってない!!」
「牧野、なんとかしてくれよ!」
「フフッ。嬉しい。」
「「何が?」」
あきらと総二郎が声を揃えて聞いた。
「類がヤキモチ妬いてくれてるって事が。嬉しいなって。」
「おいおい!」
「妬くよ!俺が起きなきゃ・・・つくしは他の奴のとこに行きそうなんだから・・・・・・」
「バ~カ!行く訳ないじゃない。類以外の人のとこになんて!」
「つくし。」
「あ~あ。やってらんねえ!あきら、帰るぜ!」
「ああ。そうだな。お2人さん、せいぜいイチャ付きな!でも牧野、希はいいのか?」
「アッそうだ!もう帰らなきゃ。・・・・・松尾さん、すみません。」
それまで、畳のコーナーで編み物に専念していた花沢家の使用人頭・松尾に言葉を掛けた。
「はい。承知しました。希お嬢様の元に行って差し上げて下さい。後は松尾にお任せ下さい。」
「はい。ありがとうございます。明日また来ます。」
「はい。」
類がつくしに
「つくし、希に会いたい。」
「うん。1週間後に検診があるからその時に会わせてあげる。まだ、余り外に出歩くのは控えたいから。我慢して!」
「うん。解った。楽しみにしてる。」
「うん。じゃあ。お2人とも逆に先に行かせて貰うね。じゃあね類、また明日!」
頬にキスをして走り去って行った。
「あっ・・・ひ・人前で・・・キスなんてしやがって・・・・・」
「総二郎・・・・・ごめんね!」
「謝るなっつうの!気にしてねえから・・・もう、なんとも思ってねえし。」
「まあまあ。それより類、退院は決まんねえのか?」
「うん。ハッキリじゃないけど、あと2~3週間てところみたい。筋肉が落ちてるからリハビリを少ししてからになるみたい。」
「そうか。でも良かったな。類!」
「ああ。」
「司は?」
「来てないよ。迷惑が掛かると悪いからって。部屋の専用電話に連絡は貰ったよ。」
「そうか。類が牧野と再会できたのは、司の尽力があってだからな!忘れるなよ。」
「ああ。」
「それじゃあ、俺らも帰るか?」
「そうだな。類、希を抱かろよな!」
「抱かせるよ。ただし、俺より後にね!」
「そうだな。」

その頃花沢邸では、両親が今後を相談していた。
「それで行こう。私に異存はない。」
「はい。では、これで進めます。」
「ああ。」
話す口調は柔らかく、見つめる瞳は温かい。そこに何があるのかは・・・・・・

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