FC2ブログ
好きな作品を流れのままに綴ります。 二次・オリジナルのお話です。よろしくお願いします。まずは【はじめに】からお入り下さい。

スポンサーサイト

-------- -- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨

問わず語り 2話 チューリップ

2010-09-20 Mon 01:21

2話【チューリップ】

NYの俺のマンションで、眠り姫の様に眠る牧野。
その傍らで、寝顔を見つめた。薄っすら閉じた瞼から流れた真珠の雫。
そっと拭いその指を見つめながら、俺は部屋を後にした。

きっと飲まず食わずで居たに違いない牧野を想い、食材を用意する為に慣れない買い物に街に出た。
自分の物を選ぶのとは違い、初めて楽しいとさえ想えた買い物。しかし、それを目覚めた牧野に上手く表現など出来る筈は無い。恐らく他の者なら、大袈裟に俺がした事に賛辞を言うに決まってる。でも、牧野は違うだろう。だけど、それが良い。俺にはさり気無い感情で充分。

部屋に戻り、目覚めて直ぐに牧野が食べられる様にテーブルに支度をして置く。
リビングでペーパーバックを読んでいると、漸く目覚めた牧野が姿を見せた。
そこに見た顔には、日本で見ていた不安そうな面影は消え失せていた。どこか吹っ切れた様な、晴れ晴れとした表情。
でも、俺は自分からは聞かない。牧野が自ら俺に言うまでは。
「牧野、お腹空いたろ。用意して置いたから、食べなよ。」
「ありがとう。花沢類があたしの為に買い物してくれたんだ?」
「あんまり旨くは無いけど。」
「あたしにとっては、凄いご馳走だよ。」
思った通り、大袈裟では無くさり気無い喜びを現す牧野の姿。
「牧野は可愛いね。何でも喜ぶから。」
「当り前だよ。あたしの場合、自分で何でもしなくちゃ、何も始まらないんだから。花沢類の様に全て整った生活の中で暮らしていると、有り難いだなんて思う事は無いだろうけど、あたしの様に貧乏だと、して貰える全てが有り難くて涙が出るよ。
花沢類、本当にありがとう。」
「牧野!」
「ん?」
俺は牧野にキスをした。
「な・何?」
「ただ、したかったから!」
「だ・ダメだよ!友達はそんな事しないんだよ。」
「うん。俺、友達だなんて思ってないから。」
「エッ!」
「俺、牧野が好きだから。いや、好きより・・・もっと強い気持ち。愛してるみたい。」
「は・花沢・・・類?」
「俺、守るから。牧野の事。
あんたが、司に想いが有ろうが無かろうが、決めたんだ。俺は牧野を守って行くって。
でも、押し付けたりはしない。あんたの意志のままに進めば良い。」
「花沢類。」
「食べたら、散歩に行こう。折角NYにいるんだから、2人で歩いてみようよ。」
「う・うん。」

牧野は、キョトンとした表情から、次第に明るい笑顔を見せ始めた。
部屋を出る前に俺は牧野に尋ねた。
「牧野、団子屋のバイト代は幾ら?」
「時給の事?」
「そう。」
「1時間800円だよ。でも何で?」
「800円!じゃあ、7ドルと少し位?ん~・・・8ドルでいいや。」
「ん!どう言う事?」
「8ドルだけ持って、出掛けてみようと思って。」
「おかしな花沢類。それじゃあ、不安じゃないの?あたしは慣れてるけど。」
「良いさ!行って見ようよ。」
「うん。」
2人は歩いて散策した。ショップに入り買い物もせずに、服を互いに身体に当てがい「似合う・似合わない」を言い合い店を出る。チョコレートショップにも入り、買いもしないのに試食を差し出され口にすると外に出る。
悪戯をしてる訳でもないのに、ほんの少し後ろめたい気分を味わいながらも笑いがこぼれ、足取りは軽い。
可笑しな矛盾を経験しながら、俺は生まれて初めての冒険を味わっている。

そんな時、目の前にアジア人の初老カップルが、地図を片手に困った顔をしていた。
「花沢類、あの人達何か困ってるみたいだね。」
「そうかな?」
「そうだよ!チョット待ってて!」
「アッ!牧野・・・」
静止の声を聞き入れる前に、その2人の元に飛んで行った。
「牧野、あんた自身NYを知り尽くしてもいないのに大丈夫なの?」
俺は、後姿に話し掛けた。
案の定、3人で地図を首っ引きで見つめた後、眉間にしわを寄せ離れた位置で待つ俺の元に牧野が近付いて来た。
「花沢類!あたしじゃぁ、どうにもならない。日本人じゃ無かったの。」
「それで、俺にどうにかしてって言いたいの?」
「うん。英語解んないモノ。意地悪しないで助けてよ。」
「仕方ないなぁ。」
俺は、渋々3人で地図に向き合う。直ぐ様2人に説明し、相手が持参していたノートに書き込んで詳しく案内もしてあげた。すると、婦人は財布から札を出し俺に掴ませた。慌てて拒んだ俺に一言。
『彼女とお茶でもしてね!』
返すのが、必ずしも良い事だとは想えない気がして、2人に笑顔を向け礼を言って受け取る事にした。

「どうしたの?」
始めの俺の立場と逆転し、離れた場所に居た牧野が俺に尋ねた。
「チップ貰った。ほら!」
手を広げ、掴まされたドル紙幣を2人で見つめた。10ドル札。
「お茶でもしてって言われたけど、これじゃあ無理そうだね。」
「そんな事無いよ。出来る場所を選べばいいんだよ!」
「そっか。そうだね。」
俺達は、ユニオン・スクエア・パークで開催されてる青空マーケットに足を運んだ。朝8時から始まっているそこには、食品は勿論の事、花も売りに出ている。
俺のポケットには合わせて18ドル。
時刻は3時を過ぎた頃。歩き廻ったせいもあり、俺でさえも何か食べたいなと思う腹の空き具合。牧野なら、もっとに違いない。でも、我慢をしているのか?言おうとはしない。
俺は、ホームメイドのパンを売る店先を見つけ、1つ残っていたバタールを買った。牧野は目移りして、あちこち見て回っている。オレンジジュースに水を買い、オレンジを1個買って13ドルが消えた。
「牧野!ベンチでおやつを食べよう。」
「エッ!おやつ?」
後ろに隠していた食材を差し出した。
「ほら!」
「うわぁ~!!!嬉しい。ありがとう、花沢類。」
俺が知る誰よりも牧野には敵わない。この喜び様を見るだけで幸せになれる。
ベンチに座り、バタールをちぎりながら互いに頬張り笑顔を交わし合う。1つのオレンジの皮を剥き半分づつ食べあう。
幸せはこう言う事を意味するのだと、牧野と居る事で学んでいる俺。
ポケットに残った5ドルのお金。
「牧野、食べてて!直ぐ戻るから。」
「うん。無くなっちゃうよ!」
「いいよ。もうお腹一杯だから。」
「花沢類は、男の子でしょ!・・・でも、遠慮なく頂いちゃうよ。フフッ!」
そんな牧野を残し、1軒の店先に向かった。
そこは、花屋。
『5ドルで買える花はどれですか?』
『バラなら1本3ドル。但し、色は黄色しかないけど。君ならおまけして2本にしてあげる。』
『色は赤が良いんです。』
『だったら、チューリップだね!それに2本買えるよ。』
『それにします。』
『赤に拘るって事は、愛の告白?』
『秘密です。』
『君に言われる女の子は、幸せだね。必ず叶います様に!俺も祈ってあげるよ。』
青年店主に激励を受けて、花屋を後にした。

ベンチで食べ終えた牧野が、お腹が一杯で眠くなったのか、身体が右に左に小さく揺れていた。
「どこまで子供何だろう?心の痛手は消えてしまったのか?」
呟きながら隣に座った。頭をそっと自分の身体に傾かせ、眠りを妨げない様にしてあげる。
10分ほど眠った牧野。
「ハッ!!」
慌てた様に目を醒まし、隣の俺をマジマジ見つめた。
「どうしたの?」
「1人ぼっちで、置いて行かれた気がして目が覚めた。」
「言ったでしょ!俺は、牧野を守るって。」
「花沢類は、変だよ。何で、あたしなの?」
「あんたと居ると、人間らしさを感じる事が出来るんだ。生きてる事が幸せだって想える。」
「変なの。あたしなんて、誰に関わる事なんて無くても、生きてるって幸せだって思っているよ。」
「それだよ!」
「エッ!」
「だから、牧野と居ると俺も幸せになれるんだ。これは、俺の感謝の印。それと・・・」
俺は牧野にチューリップを差し出した。
「可愛い!貰っても良いの?・・・ん?でも・・・それと、の後は?」
「いい。今は、感謝の証として受け取ってくれたら。」
「ありがとう。生まれて初めてだよ。お花を貰うのなんて。」
幸せそうにチューリップを見つめる牧野を側で見つめられて、俺はこの上ない充実感で一杯になった。
出掛ける為に手にした8ドルと牧野がキッカケで手にした10ドルで、心と身体が満たされた。

今迄の自分では、決して有り得ない環境の中で。
【司】と云う名前をひと言も口にしない牧野の心の痛手。計り知れないけれど、いつか埋めてみせると心に誓う。

・・・一話完結

1話花沢類
2話チューリップ
3話親友

作品作りの励みになりますので、是非「ポチっ」とお願い致します。
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
 

関連記事

別窓 | 【完】問わず語り | コメント:0 | トラックバック:0 | ∧top | under∨
<<Love 16 ヒョウタンからコマ  | STARLIGHT | ロード 6歩 女友達>>
コメント
∧top | under∨
コメントの投稿

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
∧top | under∨
| STARLIGHT |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。